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福岡!企業!元気!のための年金ワンポイント 《平成30年9月号》
障害年金事例G

 今月は透析療法を取り上げたいと思います。
 日本透析医学会や全腎協のHP・資料を調べますと、透析療法(普通に人工透析という言葉を使用していましたが、厳密には人工透析という表現は誤りだそうです)について全く知らなかった知識が山ほどあり、透析療法にかかる費用が多額(一人当たり月50万円ほど)で、ひいては健康保険財政にも大きな影響を及ぼしているなど、驚くようなことばかりでした。
 【医学大辞典より】
 透析療法とは、血液を半透膜を用いて透析し、水分及び溶質を除去して血液の浄化を図る方法で、急性腎不全の治療及び慢性腎不全の治療として行われる最も一般的な治療法である。血液を透析器(ダイアライザー)に導き浄化した後に体内に返血する血液透析(HD)と透析液を腹腔内に注入し腹膜の半透膜機能を利用して透析を行う腹膜透析(PD)とがある。

 そこで今回は、以下の2点に絞ってみます。
 @ 透析療法に関する全体的な統計資料を紹介
 A 障害年金で関わった事例紹介

 @ 日本透析学会の資料によると慢性透析患者は約330,000人です。そのうちの血液透析を受けている患者さんが97%位、残りの3%が腹膜透析です。男女別では圧倒的に女性より男性の方が多く、3年後の2021年には高齢化により35万人近くになると予想されています。
 透析患者の開始年齢は50歳代が多いのですが、平均年齢は68.15歳となっています。
 透析療法に至る原疾患の第一位は糖尿病性腎症、第二位は慢性糸球体腎炎、第三位は腎硬化症となっています。
 腎臓は、尿を作り、老廃物をろ過する内臓だと中学校の理科で習った記憶があります。この老廃物の一つがクレアチニンで、男性で1.3mg/dl、女性で1.00mg/dl以上だと腎臓に何らかの異常が起きていることが考えられるそうです。定期的な健康診断で予防ができますが、夜間頻尿や倦怠感・むくみ・息切れが起こってしまってからではかなり病状が進行しているということです。

 A 原疾患が多発性のう胞腎という遺伝性の疾患から慢性腎不全になられた方です。一番古い受診日が昭和の時代の20歳代でした。余りにも昔のことで、「受診状況等証明書」が取れないことから依頼がありました。
 今から30年以上前のことで、はたしてどこまで厚生年金加入の時に病院を受診したかという証明資料が取れるのか、困難が予想されました。また、症状が頻尿から始まっていたので、そういう個人的な体調のことは、親や友人、誰にも話していませんでした。そうなると当時のことを知っている人が書く「第三者証明書」も用意できない。困ったなと思案しましたが、再度2か所目の病院に問い合わせをしてみました。すると、一度目は当然カルテの保存期限が過ぎているので何もないと断られたのですが、二度目の問い合わせに対して受付の方とは別の事務長さんが「カルテはないが当時の受診記録がないか倉庫を探してみましょう」と言ってくれました。するとほどなくして、受付簿があったという連絡をいただきました。手書きの受付簿なのですが、その病院が泌尿器科の専門病院で受付簿に『IP』という腎臓造影検査の略称が記載してあったのです。その受付簿が障害厚生年金初診の決め手となったと思われます。無事2級を受給することができたのです。
 透析療法を行っていること自体は、日本年金機構の障害認定機銃で2級と決まっているのですが、長期間にわたり進行していく病気なので、どこの病院が初診日なのかわからない、廃院してもうすでに病院がなかった等の困難な問題が起こりやすく、受給するまでに至らないケースがあるのです。

回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
老齢・遺族・障害年金・脱退一時金・労災・加入記録の調査、手続き等
堀江社会保険労務士事務所
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