人生いろいろ、年金もコロコロ

                     前へ<<               >>次へ
福岡!企業!元気!のための年金ワンポイント 《令和2年2月号》
思い出深い年金事例2

 初診日が30年以上前の14歳の時で、カルテも廃棄されており、自分ではこれ以上請求手続きができないと当職に依頼があった案件です。その女性がり患しているのは遺伝性の病気でお子さん2人も同じ病気で障害年金を受給していました。お子さんの申請は、難なくその女性ができたのです。
 自分の障害基礎年金申請にあたり、14歳の時の初診の証明書がどうしても取れなかったのです。初診日の証明書類も現在ではやや緩和されていますが、数年前までは明らかな資料を添付しないと認められませんでした。
 お会いすると素敵なしっかりした女性でした。ごく普通のOL生活を経て、自営業の男性と知り合い結婚をしましたが、出産したお子さんが先天性の病気と分かったのです。嫁ぎ先の両親から病気に対する理解と支援も得られなかったようです。お子さんの病院通いに追われていたところ、2人目のお子さんも悲しいことに同じ遺伝性の病気を持って出生し、ご主人の後ろ盾もなく、とうとう離婚を迫られたとのことでした。
 実家に戻り、障害があるからこそ子供たちにしっかりと教育を受けさせたいと、働いてこられました。しかし、その遺伝性の病気で徐々に自身の体調も悪くなり、フルタイムでは働けないと障害年金の申請に取りかかられたのです。
 初診日証明書の代わりになるものとして,『第三者証明書』を手に入れることにしました。14歳のころのヒヤリングをしたところ、「その病気で入院しました」「クラスメートもお見舞いに来てくれました」「そういえば何年か前に入院していた時の病棟の看護師さんとばったり会ったことがあります」と思い出してくれました。「当時の病院に小児科の病棟がなく、婦人科に入院し、周囲の入院患者さんや看護師さんが子供だった私を大変かわいがってくれました」と言われたのです。
 その看護師さんを何とか探しだし、第三者証明書を書いてもらうことができたのです。たまたま、いろんなエピソードが起こり、強く記憶に残っていたそうで、非常に詳しく書いていただけたのです。
 もう一つ、幸運はことにお子さんの主治医がその母親の障害年金について、これまでの経緯から初診は20歳前であることの意見書を書いてくださったのです。
 以上のようないくつかの幸運が重なり、障害基礎年金2級の受給権が認められました。
 その後、しばらくして連絡が途絶えたのですが、どう過ごされているか気になるところです。
 この母子のほかにも、難病のお子さんを抱えた女性が、夫または嫁ぎ先から離婚されるケースに何件が出会っています。まだまだ世の中の障害に対する理解が進んでいないなと感じてしまいます。

回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
老齢・遺族・障害年金・脱退一時金・労災・加入記録の調査、手続き等
堀江社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士 堀江 玲子
福岡市早良区西新4-7-10西川ビル304
TEL092-836-8238 FAX092-836-8239
HP http://hreiko-office.com/
                     前へ<<               >>次へ
人生いろいろ、年金もコロコロリストに戻る