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福岡!企業!元気!のための年金ワンポイント 《令和2年3月号》
思い出深い年金事例3

 8年前にがんで亡くなられた男性の思い出の事例です。
 8年近く会社勤めをした後、以前からの夢である飲食店を41歳で開店されました。
 2〜3年は苦しい経営でしたが、徐々に固定客もつき、売り上げも上がってきました。

 これからという時、突然激痛に襲われ、40度の発熱、その後の検査でがんと判明。そこから8年間にわたり、入院・手術・つらい放射線治療が続きました。その間80キロあった体重は、51キロまで落ち、最後の方は、毎日午前中妻の送迎で放射線治療を受け、自宅に戻れば、ぐったりとベッドに臥せる日々でした。
 がんと判明した時に長男が生後半年、治療中に長女が誕生しました。妻は育児と店の手伝い、夫の闘病生活のフォローと神経が休まるときが全くありませんでした。

 当職に障害年金の依頼があったのは、医師から本人にもうあまり長くないと伝えられた頃です。妻と幼い子供2人のために、少しでもまとまった金銭を残してあげたいとの希望から申請を思い立たれたようです。自営業になってからの発病なので、障害基礎年金の請求となるのですが、手術をした時期がちょうど障害認定日(初診から1年半後)頃であり、執刀医の理解により、さかのぼりの請求である障害認定日請求が可能となりました。傷病名が2つあり、かなり複雑な請求だったこともあり、2度ほど年金機構本部から問い合わせが入り、審査に時間がかかってしまいました。もう少しで結果が出るというときに、残念ですが様態が急変、亡くなられました。

 障害年金の審査の途中で亡くなったとしても、遺族は未支給年金として受給できます。また、幼い子供さんが2人いるので、遺族基礎年金の手続きも可能でした。遺族厚生年金は、25年の加入期間が必要なのですが、22年位しかなく、受給できないと思われました。
 ところが、日本年金機構本部から、「もし大学卒業であれば、25年の可能性があるので確認してください」という連絡が入りました。はっとしました。障害年金申請にあたり、ヒヤリングを行うのですが、学歴までは尋ねません。ですが、しっかりとした方でしたので、もしやと思い調べると確かに大学を卒業されており、合算対象期間として35月入れられることがわかりました。
 障害基礎年金の認定日請求で、過去5年分が570万円。遺族基礎年金と遺族厚生年金で月に12万円です。亡くなられたご主人の意思を尊重できた結果となりました。  この原稿を書きながら、あの幼いお子さん達も18歳と14歳になっている頃だと思い出しています。

回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
老齢・遺族・障害年金・脱退一時金・労災・加入記録の調査、手続き等
堀江社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士 堀江 玲子
福岡市早良区西新4-7-10西川ビル304
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