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福岡!企業!元気!のための年金ワンポイント 《令和2年5月号》
DV別居の妻に遺族年金支給判決

 今月号は直接関わった事例ではないのですが、DV被害女性の遺族年金を取り上げます。令和1年12月の新聞に『DV別居の妻に遺族年金 東京地裁、国に支給命令』との記事が掲載されました。この判決を受け、今年2月に日本年金機構より周知広報が出されました。
 これまでDV被害者であった妻は、遺族年金を受け取るための生計同一条件(生活費の出し入れが一緒又は住民票が同じ)や生計維持条件(生活費の仕送りがある)を満たすことができず、受け取ることが出来なかったのです。今回の判決で受給への道筋が少し広がったことになりますので、手続き内容をご紹介いたします。

【対象となるDV被害の方】
● DV防止法に基づき裁判所が行う保護命令が下りたDV被害者の方
● 婦人相談所、民間シェルター、母子生活支援施設等で一時保護されていたり、入所しているDV被害者の方
● 公的機関や公的機関に準ずる支援機関が発行する証明書等を通じて、上記に準ずると認められるDV被害者の方

【請求手続きに必要な書類】(原則)
 身分証明書(マイナンバー)
 戸籍謄本
 死亡診断書写し
 住民票上の住所が異なった日が確認できる住民票
 請求者の通帳写し
 死亡時の前年の請求者の所得証明書
 DV被害者であることが確認できる証明書
 DV被害等に関する申立

【留意事項】
 別居中の方は、別居期間の長さ、別居の原因や解消の可能性、経済的な援助や定期的な音信、訪問の有無等が提出された書類により総合的に判断されます。

 過去に遺族年金の支払いができないと決定された場合でも、DV被害に関する新たな書類の提出があれば、再度、遺族年金の請求手続きができます。

 今回の裁判では、女性が夫の収入から得た財産を持ち出して生活費に充てており、それを夫も黙認していたことが『生計維持されていた』と判断されたようです。

 数年前ですが、次のような相談がありました。
 「酒乱で暴力をふるう夫から逃れて、子供3人を連れ、10年以上前に別居しました。最近になり、夫が住むアパートの大家さんから夫が亡くなっていると連絡がありました。私は遺族年金がもらえませんか?」
 子供たちが高校を卒業していたので、生活費として決まった額を受けとっておらず、年に1〜2回会った時に小遣い程度の金銭をもらっていました。音信も同じく電話で年に1〜2回子供のことを話すだけでした。これでは生計を同じくしていたとは言えないため、受給は無理ですとお断りしましたが、今回の判決を聞くと、再度、調査して詳しい資料を集めることができれば、受給可能性が上がるのではないかと考えてしまいました。

 DV被害は、友人・知人・親族等に相談できにくいものです。ただ、遺族年金を受給するには、揃えた資料によって審査されます。DV被害の相談をした証明書があれば、いざというときの負担が軽減されます。相談連絡先を載せておきます。参考になさってください。

 内閣府男女共同参画局  DV相談ナビ 0570−0−55210
 福岡県女性相談所 092−584−1266
 福岡市配偶者暴力相談支援センター 092−711−7030
 北九州市配偶者暴力相談支援センター 093−591−1126

回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
老齢・遺族・障害年金・脱退一時金・労災・加入記録の調査、手続き等
堀江社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士 堀江 玲子
福岡市早良区西新4-7-10西川ビル304
TEL092-836-8238 FAX092-836-8239
HP http://hreiko-office.com/
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