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社会保険審査会の裁決事例D |
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朝日新聞の「患者を生きる」という欄に、先天性の鎖肛(直腸肛門奇形)により30年間排便のコントロールができない女性の記事が載っています。日常生活の質(QOL)が非常に低く、これまで数々のつらい思いをしてきただろうと感じながら読みました。記事の結びは「やっと、普通の生活ができるようになりました。生活の質も取り戻しました。」で終わっています。 過去の審査会裁決例に関連するものがありましたのでご紹介します。 以前から慢性腎不全、腎移植後慢性移植腎症、鎖肛術後、神経因性膀胱により障害基礎年金2級を受給していたけれど、改善したとして支給停止になったものです。
日本年金機構の障害認定基準に以下のような規定が載っています。
ちなみに、初診日が国民年金加入の方だと、請求手続きは障害基礎年金となり、1級と2級しかなく3級がない為、人工肛門を造設、又は新膀胱を造設しても障害年金を受けることができません。具合が悪くなり受診をした日が厚生年金加入中で、初めて3級に該当します。 ここで鎖肛(直腸肛門奇形)について少し説明します。妊娠2〜3か月までは直腸・肛門は膀胱などとつながっており一つの「腔」になっていて、その後徐々に分離するのだそうです。何らかの理由で分離ができず、肛門が開かなかったり、小さな穴しかなかったり、位置がずれたりします。多くは誕生後すぐにわかり、早い段階で手術を受けますが、重症度は様々のようです。
再審査請求人の場合は、先天性の鎖肛及び尿閉は、排せつ(排便・排尿)機能をつかさどる臓器(直腸及び肛門括約筋・肛門、腎臓及び尿路(尿管・尿道)が未成熟の複合奇形によるものであると推察され、まず、救命目的に誕生日の翌日に腹壁に人工肛門と膀胱瘻を造設し、1歳5か月の時に機能の低下した左腎臓を摘出し、その1か月後に腹壁に造設されていた人工肛門を閉じ、直腸部と肛門部を造設している。そして、9歳の時に父親をドナーとした生体腎移植がされ、同時に、腹壁に造設されていた膀胱瘻を虫垂利用の腹壁導尿路に造り変える手術が行われている。その3年後に先天性短尿道に対して、虫垂利用の導尿路を本来の尿道の位置に移植(尿道形成術)していることが認められるのである。
支給停止になったときから、この再審査請求で認められるまで1年半から2年ほどかかり、用意周到な準備が必要です。この準備を一般の方、しかも障害をお持ちの方に求めるのは非常に酷で困難なことです。待つ間の心理的・経済的な負担も多大なものがあります。 回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
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