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福岡!企業!元気!のための年金ワンポイント 《令和5年12月号》
〜障害年金事例H〜

これまで障害年金の手続きを理解しやすいように、一つに絞った傷病名で事例の紹介をしてきました。しかし、複数の傷病にり患されている方もいますし、傷病名がたくさんあれば認められやすいのではないかと質問してこられる方もいます。たくさん病気にかかっていれば認められるというものではありませんが、今月号は複数傷病をお持ちの方の事例を紹介します。
私達社会保険労務士が、複数傷病をお持ちのお客様から障害年金申請を受託するときには、受給可能性が高いものに絞る・労力をなるべくかけずに上位等級を目指せる方法をさがす・できるだけ費用負担を抑えること等を考えて請求方針を決めます。
以下、事例の背景や経緯を紹介します。

(請求者)50歳代男性
(相談者)配偶者
(年金加入歴)30年間ほど会社員で厚生年金に加入していたが、脱サラし自営業を営む。
(抱えていた傷病名)腰椎すべり症、上咽頭がん、虚血性視神経委縮、重症大動脈弁閉鎖不全症、陳旧性脳梗塞、高次脳機能障害
(請求できる障害年金)すべての傷病が会社員退職後の国民年金加入中のもので、障害基礎年金の請求が可能。
(家族の意向)依頼を受けたときには、一時期暴れたりしていたため、自宅介護ができず施設入所中。施設の費用も掛かることから、複数枚の診断書代がかさむとしても、確実に上位等級を目指したいとのことでした。
それで受給可能性がありそうな何種類かの診断書を合わせて提出し、1級を目指すことにしました。

@ 循環器疾患の診断書で「重症大動脈閉鎖不全症」を請求する(出来上がった診断書の内容は2級相当でした。)
A 精神の診断書で「脳梗塞の影響による高次脳機能障害」を請求する(ほぼ1級相当の診断書でした。)
B 音声又は言語機能の診断書で「脳梗塞による音声又は言語障害、失語症」を請求する(ほぼ2級相当の診断書でした。)

医師から@の傷病とABの傷病とは因果関係がないと言われていましたので、@が2級でAかBが2級であれば、合わせて1級になるのです。Aのみで1級となる可能性もありました。最終的にどういう判断がおりるか、審査を待つことになります。
ただ、等級が決定したとしても、何年かおきに更新というものがあり、診断書を提出し続けないといけません。仮に3枚の診断書で合わせて1級になれば、更新時に最高3枚の診断書を提出しないといけないため、労力や費用の負担が重たくなります。できればなるべく提出枚数を少なくしてあげたいところです。
このケースでは、幸いAの精神の診断書だけで1級が決まりましたので、ほっとしました。
ですが、その2年後の更新時に困ったことが起こりました。家族から更新をどうしたらいいかと相談があり、初回請求時に診断書を書いてくださった病院へ依頼しましたが、医師が転勤によりいなくなり、後任の医師から書けないと断られたのです。
そこで、もともと陳旧性脳梗塞で手術を受けた総合病院に事情を説明し、診断書作成をお願いしました。何とか1級を継続することができました。高次脳機能障害で診断書を作成できる医師がさほど多くないことから、更新のことまで考えて手続きを進める必要があります。
この方の場合は、いくつもの病名がある為、請求方針を決めるのにかなり迷ったことを覚えています。

回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
老齢・遺族・障害年金・脱退一時金・労災・加入記録の調査、手続き等
堀江社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士 堀江 玲子
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