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福岡!企業!元気!のための年金ワンポイント 《令和6年7月号》
信義則違反が認められた遺族厚生年金〜社会保険審査会の事例より〜

年金事務所等の落ち度により、遺族厚生年金を受け取る権利が『時効消滅』※したといして、5年より前の分が受け取れなかった事を争った案件を紹介します。 ※保険給付を受ける権利は、5年を経過したときは、時効によって消滅する。会計法30条でも、国に対する権利で金銭の給付を目的とするものについては、5年間これを行わない時は時効により消滅するという規定があります。

【遺族厚生年金の受給条件】受給条件は、他にもありますが、争いの原因に絞ります。
〇保険料納付済期間+免除期間+合算対象期間※=300月以上あること
※合算対象期間(カラ期間)・・・受給条件に含めることができるが、年金額にはならない期間。代表的なものとして、会社員と結婚しているが昭和61年3月までの主婦だった期間(国民年金は強制加入ではなく任意加入だった時代)
今回の場合は、20歳以後の大学生だった期間が合算対象期間となります。

【経緯】
@ 元会社員で年金生活者のAさん死亡。
A 妻のB子さん、死亡後まもなくして遺族厚生年金を受け取れるのではないかと〇〇年金相談センターへ相談に行く。
受給条件である月数が、6月足りないため受給できないと告げられる。
厚生年金の月数183月+国民年金の月数111月=294月
B それから数年後、あきらめきれない為再度別の年金事務所へ相談に行く。
再び、受給資格が足りないから受け取れないと言われる。
C 数年経過してなお腑に落ちないB子さん、みたび年金事務所へ相談に行く。
そこで、Aさんの詳しい経歴を聞かれ、大学生の期間が証明できれば、300月を満 たすと言われる。
D 大学から在籍証明書を取り寄せ、無事に手続きを終わらせることができた。しかし、5年より前の分は、時効消滅という規定により受け取れないと告げられる。
E 最初の相談時に担当者が適切な説明をしていれば、時効消滅という規定にかからなかったのに、納得がいかないB 子さんは社会保険労務士に依頼し、審査請求から再審査請求という不服申し立てをすることにした。

【結果】一部抜粋ですが、社会保険審査会が出した結論を載せます。
本件相談を受けた〇〇年金相談センター等の担当者から、亡Aの学生期間の照会があれば、請求人が亡Aに係る同大学b学部の学生期間の存在に即答できたことは明らかであり、同大学に照会をすれば容易に具体的な期間の確認ができたと認められる。これらの事情に照らすと、本件相談を受けた〇〇年金相談センター等の担当者が、請求人に対し、亡Aの学生期間について具体的に確認せず、亡Aが適格死亡者に該当しないとして、亡Aに係る遺族厚生年金を受給できない旨回答したことは、相談の担当者に求められる確認及び説明義務に反した不適切な対応であったと言わざるを得ない。
保険者において、平成〇年〇月分までの年金に当たる本件支給分を時効消滅したとして支給しないことは、信義則上許されないというべきである。以上によれば、上記の趣旨と異なる原処分は相当ではなく、取り消されなければならない。

上記のことから、死亡したときにさかのぼって受け取れることになっていますが、ここまでの結論を導き出すにも2年ほどかかります。Aさん死亡後10年近く経過したのではないかと思うと、B子さんのこれまでの心痛は計り知れないなと感じます。

当職も過去に似たような事例がありました。
障害年金申請の結果を待っている間に相談者が死亡しました。残されたのは若い妻と幼い子供2人です。上記の事例と同じように300月なかったのですが、死亡後に改めて妻に学歴を確認しましたら、大学を卒業していましたので、カラ期間の証明を行い、遺族基礎年金と遺族厚生年金を受給できたのです。見逃していればと思うとぞっとします。

回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
老齢・遺族・障害年金・脱退一時金・労災・加入記録の調査、手続き等
堀江社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士 堀江 玲子
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