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福岡!企業!元気!のための年金ワンポイント 《令和7年2月号》
R6年11月号続編(透析による障害年金事例)

 R6年11月号で透析治療中の男性が、受診状況等証明書(初めてかかった病院の証明書)が取れずに、請求手続きをあきらめていた案件をご紹介しました。
 今回総合的に障害厚生年金1級と決定しましたので、続編として、できる限り具体的な内容をお伝えします。個人情報は多少変えています。
 仮にAさんとしますが、元々10代からの肢体障害で「障害基礎年金2級」を受け取っていました。年金額は月に68,000円と「年金生活者支援給付金」という福祉的な給付5,300円です。
 そして、透析による障害年金の等級は、基礎年金であっても厚生年金であってもおおむね2級と決まっています。初診日の証明書が病院の廃院により、取得できないという状況は、前回と同じなのですが、そもそもこの時を初診日とする事があまりにも理不尽だと感じていました。
 健康な20代の若者がたまたま医師から「糖尿病の気があるよ」と告げられたとしても、病状が切迫していない限り、すぐに治療を開始するとは思えないのです。
 こんな不満を言っても、審査の中で通用しない為、本来の正しい初診日と思われる日がいつなのか、資料を集めるしかないと決心しました。
 集めるのはかなり大変でした。20〜30年前の事ですから、無理もないのですが、本人の記憶が定かでなく、あいまいなのです。日本年金機構から取り寄せた前回提出した書類も、骨折で受診した病院等が記載されており、信憑性に欠けるのです。そこで、身体障害者手帳の診断書や通院した複数の病院に順番に問い合わせ、何とかつじつまの合う資料を取り寄せ検討しました。ここを初診日として問題ないだろうという時期を決めました。あとは私が作成した申立書です。証明資料にやや難があったとしても、幸い納付記録に1月も未納(支払っていない期間)がないため、少なくとも障害基礎年金2級は認めてくれるのではないかと淡い期待を持っていました。納付すべき期間に1月も未納がなければ、本人が申し立てる初診日を認めるというような通知もあるのです。
 余談ですが、転職の合間も本人が国民年金保険料を支払って、未納がなかったということではないのです。すでに肢体障害で障害基礎年金を受け取っている為、法定免除という法律上の取り扱いで払ったと同等の記録になっていたのです。
 今回障害厚生年金1級となったのは、複数の障害がある為、併合認定という処理が行われたのです。前の障害が障害基礎年金2級、後の障害が障害厚生年金2級であれば、合わせて障害厚生年金1級となる取り扱いなのです。
 年金額は、障害基礎年金1級が月85,000円(定額といい、決まった額です)、障害厚生年金1級が45,000円です。(この金額は、人によって違います。初診日から1年半後の障害認定日までの平均的な給料で計算します。今回は初診日を当初の20歳代と決定したようです。ですから障害認定日までの平均の給料であれば、安いのです)年金生活者支援給付金も6,600円ほどになりました。合計で月136,600円となり、増額分が63,300円です。これまでぎりぎりの生活をなさっていたようで、これだけ増えるとかなりゆとりができるのではないかと思います。初診日だけは納得いきませんが、障害厚生年金と認めてくれたことには、納得しています。請求資料を作成した苦労が報われ、非常にうれしく思いました。

回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
老齢・遺族・障害年金・脱退一時金・労災・加入記録の調査、手続き等
堀江社会保険労務士事務所
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