私が所属しているNPO法人の全国組織に障害年金支援ネットワークがあります。
会報誌に「過去心に残った事例」として投稿しましたので、今回はその記事をご紹介します。
開業して20年、公的年金を中心に業務をやってきました。現在、障害年金の取り扱い件数は年間30件ほどですが、そのほとんどが同業の社労士、医療関係者からの紹介です。
これまでに扱った案件の中で、請求者の人間性が強く心に残っている女性の事例を紹介します。こうして彼女を思い出すこと自体が供養になる気がするのです。
【経過】
年齢:当時49歳、単身者 若い時から障害者の姉と両親の介護に明け暮れ、正社員としての勤務はほとんどできませんでした。ただ、20数年にわたり国民年金保険料を前納できちんと払っていました。
傷病名:末期乳がん、多発性骨転移、多発性肝転移、骨髄癌腫症
初診日:平成22年10月18日
自身で左胸のしこりに気が付き、12月に左胸切除、以後つらい放射線治療25回。
治療のかいもなく、がんは全身に広がり足と腹部の激痛に苦しみました。一人暮らしですが在宅での治療を希望し、介護保険を利用。1週間に一度は、訪問看護師からマッサージを受け、不安な気持ちを聞いてもらいます。家事援助サービスも利用し、最後までなるべく静かな環境のもと過ごしたい、体調のいい時には好きなピアノ演奏を楽しみながら自立した生活を送りたいと希望していました。依頼を受けた平成31年の時点でステージWです。
依頼に至る経緯:平成31年2月下旬、診断書作成病院の事務長と面談(事務長は院長の妻であり、着手金は病院が経費として負担するが、このことは本人に口外してくれるなと依頼される)
面談日: 平成31年3月9日と24日 本人の希望により2度に渡り当事務所にて面談を行う。(まもなく外出ができなくなる事と、これまで社会保険労務士という職業を知らなかったので、事務所訪問をしたいとの理由)
受診状況等証明書依頼:初診日のA病院にはカルテなし、転院したB病院で取得、A病院の「診療情報提供書」もB病院より提供される。
診断書作成依頼:一般状態区分が当初(ウ)だったが、余命2〜3か月と記載してあり、なんとか生きているうちに決定したと伝えてあげたかった為、主治医に(エ)に変更していただけないかと依頼し、了承していただく。
提出日: 平成31年3月26日提出
決定日: 平成31年5月16日 障害基礎年金2級15号 喜びの電話あり
報酬支払:どうしても手渡しをして感謝を伝えたいとの希望により、最後の対面となる。2か月分13万円をいただく。
半年後に病院の事務長から死去のお知らせあり。
性格上人前では元気にふるまってしまう傾向があると言っていました。確かに朗らかで、好奇心旺盛な素敵な女性でした。一般的ながんの事例ですが、私に出会え、話ができてとっても嬉しかったと言ってくれました。私にできることは、できる限り早く手続きを進め、できる限り受給権に近づける事だけです。それが何とか達成できてよかったかなという事案です。
回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
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