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福岡!企業!元気!のための年金ワンポイント 《令和7年5月号》
脳脊髄液減少症

障害年金の申請を行う場合、『傷病名』によって認定が難しいと言われている4つの傷病があります。どのような傷病なのか簡単に紹介します。

@ 化学物質過敏症・・・化学物質への暴露が本人が持っている許容量を超えると、免疫障害・自律神経障害・臓器障害等のアレルギー疾患等により、様々な障害が出てきて日々の生活そのものを送ることが困難になります。診断書とともに、どういう種類の化学物質(車の排気ガス、殺虫剤、漂白剤、マニュキュア等)に反応するか、また程度はどの程度か、医師にアンケートを記載してもらうようになっています。

A 線維筋痛症・・・原因不明で、各種の検査を受けても異常がなく、全身の痛みだけが主な症状です。長期間にわたる強い痛みの為、生活の質がかなり下がります。請求の際に、日本年金機構は「重症度分類」というアンケート様式を用意して、どれほどの痛みなのか主治医に評価してもらいます。2級相当は『痛みの為自力で体を動かせず、ほとんど寝たきりの状態になる。自分の体重による痛みで、長時間同じ姿勢で寝たり座ったりできない』というのが目安です。

B 慢性疲労症候群・・・原因不明の全身倦怠感が急激に始まり、休養しても回復しません。長期間にわたり微熱・のどの痛み・頭痛などが持続し、リンパ節のはれ、筋力低下、精神的な症状が続く方もいて、日常生活に多大な影響が出ます。
この疾患もその疲労度を10段階に分け、請求者がどの段階なのか評価してもらうようになっています。

C 脳脊髄液減少症・・・たとえば、交通事故やスポーツ等で頭部へ強い衝撃を受け、脳の硬膜に穴が開き、髄液がもれてきて、頭痛・めまい・倦怠感や易疲労感が出てきます。座った姿勢だと症状が強く表れ、寝た姿勢だと症状が軽減します。その為、1日何時間休んで横になっていられるかを記載するような書式になっています。

 今月号は、脳脊髄液減少症で苦しまれている50歳代の男性Aさんを紹介します。
《手続き依頼の経緯》
 2年ほど前に自分で請求手続きは無理だと思い、近くの社会保険労務士に依頼しましたが、不支給となってしまいました。その時よりも、症状もやや重たくなり、自身で経営している店に立つこともできなくなり、売り上げも激減、廃業を決心しました。しかし、その後の生活をどうしたらいいか不安を覚え、再度障害年金の申請をしてみようと、知人の紹介で当職の事務所に見えたのです。
《受給のポイント》
・初回請求時と今回の初診日相違
 難病の場合、確定診断がつかない為、何か所も病院を転院している方がいます。その為、初診日がいつなのかわかりにくいのです。今回も、改めて詳しく調べたら、初回請求の時の「初診日」と違うのではと思ったので、その理由を申立書に記載しました。

・障害年金に精通したいい医師との出会い
 Aさんは、この傷病を診ることができる専門医が非常に少ない為、大きな出費(交通費)を伴いながら広島県まで出向いて受診・治療をしていました。ただ、患者の立場を十分理解してくださる主治医だったので、簡潔明瞭な言葉で2級相当の診断書を作成してくださいました。
 例えば、日中の80%程度を臥床していることが多い、日常生活に著しい支障が出ている、これまでの治療経過により難治性と思われ、長期化する等です。もちろんこれらは事実ではあるのですが。

・治療の資料作成
 この病気に対しての治療に「硬膜外自家血注入療法」ブラッドパッチというものがあります。髄液が漏れている付近に血液を注入し、血液凝固により穴をふさぐ治療方法です。
 Aさんは、これまでこの手術を9回行っています。これ以上のブラッドパッチはできませんと言われていました。この治療の日付と回数、内容等を資料にして添付しました。

 審査において、上記のことを評価してくれたのか、返戻といって追加書類を求められることもなく、スムーズに障害厚生年金2級(年150万円)が認められました。Aさんからは、これから安心して毎日の生活が送れるとの感謝の言葉をいただきました。

回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
老齢・遺族・障害年金・脱退一時金・労災・加入記録の調査、手続き等
堀江社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士 堀江 玲子
福岡市早良区西新4-7-10西川ビル304
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