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福岡!企業!元気!のための年金ワンポイント 《令和7年6月号》
障害等級変更の事例(脊髄小脳変性症)

 障害年金が受給できたから、そこで手続きはおしまいという事ではありません。その後、結婚したり、子供が生まれたりして加算がつくこともあります。障害状態が良くなり止められてしまうこと、逆に障害状態が悪くなり、上位等級になることもあります。今回は「脊髄小脳変性症」の方を事例として、等級がどのように変わっていったかご紹介します。

【脊髄小脳変性症とは】
 難病情報センターからの抜粋です。
 歩行時のふらつきや、手の震え、ろれつが回らない等を症状とする神経の病気です。動かすことはできるのに、上手に動かすことができないという症状です。この症状を総称して運動失調症状といいます。主に小脳という、後頭部の下側にある脳の一部が病気になった時に現れる病気です。原因は不明です。
 全国で3万人以上いますが、うつる病気でもなく、2/3が遺伝性ではありません。治療法としては、症状を和らげる対症療法としての服薬が中心となります。

【A介さんの場合】個人情報は変えております。
・初回請求(42歳)
 正社員として10年以上勤務した30歳半ばの頃に、ふらつきを自覚しました。気になり病院を受診しましたが、詳しい検査が必要となり、総合病院受診。遺伝子検査にて確定診断が下されました。その後緩やかに症状は進み、このまま仕事ができなくなったらと不安になり、自分で障害年金を請求してみたところ不支給となってしまいました。
・2回目の請求(44歳)
 当職に相談があり、再請求することになりました。前回の不支給原因を突き止めないと、同じ結果になりかねません。日本年金機構から不支給の理由が載った「障害状態認定表」を取り寄せた所「筋力、ADLともに明らかな肢体障害に該当しないと考えます」と記載してありました。単純に障害状態が軽いと判断されたようです。
 2回目の時は、筋力は衰えていませんでしたが、日常生活の動作にかなり支障が出ていました。つまむ・握る・タオルを絞る・ひもを結ぶ・用便の処置をする・ワイシャツを着てボタンをとめる・靴下を履く・片足で立つ・深くおじぎをするが全て×の評価で、一人でまったくできません。
 それに医師が「労働能力は低い」と記載してくれています。労働に著しい制限を受けるものが3級なので、無事に3級が決定しました。

・一回目の額改定請求(46歳)
 かなり障害状態が悪化し、仕事もできない為退職しました。次の更新時期を待たずに「額改定請求を行いたい」と連絡がありました。確かに、震えが酷くなりカップが持てない、字が書けない、滑舌が悪くなり会話にも支障が出てきていました。2級だと障害基礎年金が約80万円加算され、配偶者と子の加算も付きます。3級は年70万円位でしたが2級になれば月に14万円になり、ずいぶんと助かります。結果は2級が認められホッとしました。

・二回目の額改定請求(48歳)
 47歳時にふたたび、1級への額改定請求を希望されましたが、これは困難ではないかと思いました。ほとんど全介助状態でないと1級に該当しないからです。しかし、強く希望されるので、診断書を取得してみてその内容で判断することになりました。主治医も1級は無理でしょうということで、この時は諦めてもらいました。
 48歳時にまた、悪化しているので行いたいと連絡があり、診断書を取得しました。そうすると確かに1級に届くのではないかと思うほど「日常生活における動作の障害の程度」はほぼ×(一人で全くできない)でした。その結果、無事に1級(月に15万円強)が認められました。妻子の生活を非常に気にしてありましたので、少しでも生活費の足しにしたいという強い思いが、何回もの額改定請求につながったのでしょう。

回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
老齢・遺族・障害年金・脱退一時金・労災・加入記録の調査、手続き等
堀江社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士 堀江 玲子
福岡市早良区西新4-7-10西川ビル304
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