貨物自動車運送事業者の事業主様は既にご存知のことだと思いますが、「運輸安全マネジメント」について述べさせていただこうかと思います。
「運輸安全マネジメント」とは、JR福知山線脱線事故など平成17年度に起きたヒューマンエラーによる事故の多発を受けて創設された制度で、平成18年10月に運輸安全マネジメントの導入に伴う自動車運送事業関係法(道路運送法及び貨物自動車運送事業法)の一部を改正する法律が施行されました。
「輸送の安全性を確保すること」は、運送事業者の当然の責務ですが、改正法の施行により事業経営者の安全確保義務が明確にされました。
すべての運送事業者は、経営トップから現場の運転者に至るまで輸送の安全が最も重要であることを自覚し、運輸安全マネジメントにより絶えず輸送の安全性の向上に努めなければなりません。
【根拠規定の確認】
では最初に、貨物自動車運送事業法ではどのように規定されているか関連する条文をピックアップしてみようと思います。
貨物自動車運送事業法
(輸送の安全性の向上)
第15条 一般貨物自動車運送事業者は、輸送の安全の確保が最も重要であることを自覚し、絶えず輸送の安全性の向上に努めなければならない。
貨物自動車運送事業輸送安全規則
(輸送の安全)
第2条の2 貨物自動車運送事業者は、経営の責任者の責務を定めることその他の国土交通大臣が告示で定める措置を講ずることにより、絶えず輸送の安全性の向上に努めなければならない。
【運輸安全マネジメントの実施】
詳細や根拠規定はここでは省略しますが、運輸安全マネジメントは保有車両が300両以上(トラック、タクシーの場合)の大規模事業者には「安全管理規程の作成届出」と「安全統括管理者の選任届出」が義務付けられています。
しかし大多数の300両未満の事業者にはこのような義務付けはありません。
では義務付けられていないからといって何もしなくてよいのでしょうか?
そんなことはありません。
輸送の安全性の向上に取り組むこと、つまり運輸安全マネジメントを実施することは、先程の根拠規定で確認したとおり、すべての事業者に義務付けられた努力義務です。
確かに努力義務なので、運輸安全マネジメントそのものを実施していなくても行政処分はありません。
しかし運輸安全マネジメントの実施により会社全体で安全対策に取り組み、輸送の安全のレベルアップを図る事は事業者にとって事故などのリスクを低減させる重要なことだと思います。
実施しなかったら行政処分があるとかないとかの次元ではないと私は考えます。
【行政処分との関係】
先程、安全マネジメントそのものを実施していなくても行政処分はないと書きました。しかし安全マネジメントに関する事項で行政処分が課される事項もあります。
それは「安全情報の未公表」と「指導監督違反」です。
輸送の安全に関する目標とその達成状況を公表することは全事業者に義務付けられています。また輸送の安全に関する基本的方針を設定し従業員に周知を図ることや、ヒヤリ・ハット体験などの情報伝達が適切に行われるよう講じることなども全事業者に義務付けられています。
【最後に】
行政処分との関係ばかりで言うのは私個人としてはあまり好きではないのですが、まずは輸送の安全に関する目標を設定しその達成状況を公表することやヒヤリ・ハット体験などの共有から始めてみるのはいかがでしょうか?
今回は安全マネジメントの概略を書きましたが、次回以降もう少し掘り下げて小規模事業者が実施していくべき内容を書いていこうと思います。
余談ですが、前回チラッと書いた私の運行管理者試験、合格しておりました(笑)
回答者 行政書士 久々宮典義
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