事業を営んでいる経営者の方には、会社を複数経営されている方も多いと思います。経営をされているうちに、複数ある会社のうちある会社を吸収合併したりすることもあろうかと思います。
吸収合併などのときには財務面が問題の中心になることが多いとは思いますが、気をつけなればならないことは許認可が引き継げるかということです。許認可が引き継げなければ、本来の事業ができないことになりますし、無許可営業、無免許営業になりかねません。
今回は私が経験した宅地建物取引業の吸収合併での免許の失効についてお話しをしたいと思います。
【どのような事業で、どのような会社か】
・許認可事業名 宅地建物取引業免許
・免許取得会社 株式会社A
・免許取得時期 平成19年9月1日
・免許期限 平成24年8月31日
【経緯】
株式会社Aの社長から、更新の期限が近づいたので手続きをお願いしたいとお電話でご依頼をいただきました。その際に取締役が1名増えているとお聞きしましたので、事前に役員変更をしてから更新の手続に入らなければならないことをお話しました。
さて、株式会社Aに訪問したときのことです。「どなた様が役員になったのですか?」の質問に社長は会社の履歴事項全部証明書を見せてくれました。
その履歴事項全部証明書を見てみてビックリ!!
まず商号のところ。株式会社Bに下線が引かれて(下線のあるものは抹消事項であることを示しています)、株式会社Aとなっており、その横に【平成21年2月1日変更】と書いてあるのです。
ついで登記記録に関する事項のところを見ると【平成21年2月1日福岡市○区○○1丁目2番3号株式会社Aを合併】と書いてありました。
おかしいですよね。すぐに気がつきました。
株式会社Aは平成19年9月1日に宅建業の免許を取得しました。
でも履歴事項を見ると平成21年2月1日に株式会社Aに商号変更しているのです。今は株式会社Aとなっている会社も平成19年9月1日時点では株式会社Bだったのです。
つまり元々同じ所在地にあった株式会社Bが株式会社Aを吸収合併し、同時に株式会社Aに商号変更していたのです。
【 免許はどうなる? 】
この履歴事項全部証明書を見て、正直これはダメだ、更新できないと思いました。
なぜなら免許を受けた株式会社Aは平成21年2月1日に消滅しているのです。いくら商号を同じにしたって別法人です。設立年月日も会社法人等番号も違います。別の「人」なのです。
では免許はどうなるのか。
平成21年2月1日にその会社は消滅しているのですから、平成21年2月1日に廃業になります。株式会社B改めAは無免許業者なのです。今回のケースでは、株式会社B改めAは兼業事業がメインで宅建業については実績がなかったので宅建業法違反の無免許営業にはなりませんでしたが、危ないところでした。
あわてて株式会社Aの廃業届を提出し、株式会社B改めAで新規申請することになりました。
(参考条文)
(廃業等の届出)
第十一条 宅地建物取引業者が次の各号のいずれかに該当することとなつた場合においては、当該各号に掲げる者は、その日(第一号の場合にあつては、その事実を知つた日)から三十日以内に、その旨をその免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に届け出なければならない。
二 法人が合併により消滅した場合 その法人を代表する役員であつた者
【問題と対処法】
今回のケースでの問題点とどのようにすればよかったのかについては、次回にお話ししたいと思います。
回答者 行政書士 久々宮典義
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