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福岡!企業!元気!のための許認可事業のココロエ 《平成25年10月号》
一般貨物自動車運送事業の新規参入基準の強化

 9月3日に国土交通省において、 一般貨物自動車運送事業の新規許可申請における処理に関する通達の一部改正に関するパブリックコメントの募集が公表されました。
 パブリックコメントとは行政などが規則あるいは命令などを制定しようとするときに、 広く公に、 意見・ 情報・ 改善案などを求める手続のことです。 公的な機関が規則などを定める前に、その影響が及ぶ対象者などの意見を事前に聴取し、 その結果を反映させることによって、 よりよい行政を目指すものですが、 実際のところはそれによって改正案が大きく変更されることはほとんどないようです。改正案がそのまま公布・施行されることが多いようです。

【改正の背景 】
 国土交通省に設置された「トラック産業の将来ビジョンに関する検討会」の下に今年2月に有識者等を含めて「トラック産業に係る取組作業部会」を設置し、安全性、健全性を向上させるための参入や多層構造の弊害の解消等に向けて対策を検討しました。
 今回、同部会で検討した「参入時基準の強化」の具体的措置として、@資金計画、A損害賠償能力に係る許可基準の見直しを行うため、関係する通達を改正することとなりました。

【改正の概要 】

 @ 許可申請時において必要となる所要資金額の確保に関する基準の引き上げ

 ・ 事業の安定的な経営を行う観点から、 自己資金が所要資金の2分の1以上に相当する金額以上としていた基準を所要資金全額の確保をするように引き上げる。 ( 「2分の1以上」という規定を削除)
 ・ 資金の調達方法について、法人については貸借対照表上の資産の部の「流動資産」 (原則として「預貯金」 )で審査することとする。 (現行は純資産の部で審査)

 A 事業者が加入すべき任意保険等の保険金額に関する基準の引き上げ

 ・ 事業者が事故発生時に確実な賠償を行い、 被害者保護を図る観点から、 加入すべき任意保険等の保険金額を被害者1名につき保険金額5, 000万円以上から無制限に引き上げる。

【 改正により予想される事態】
 上記改正概要のAについては、ほとんどの事業者が対人無制限の任意保険に加入しているし、加入しようとするでしょうから、特段大きな負担になるとは思えません。

 しかし、改正概要@の所要資金の確保に関する基準の引き上げは、とても厳しいものだと思います。新規許可申請時には決められた基準により新規開業に必要な資金の計算をしますが、今まではその額が例えば1,000万円だったら500万円を用意すればよかったのが、今後は1,000万円全額を用意しないと許可申請すらできなくなるのです。
 私の経験では新規開業時に必要な資金が1,000万円を下回ることはほとんどなかったと思います。
 一般貨物自動車運送事業は零細企業が多いので、新規開業時に1,000万円もの金額を簡単に準備できる企業はそう多くはないと思います。特に新たに独立して開業しようとすることはとても難しくなってくると思われます。

 行き過ぎた規制緩和を見直し、適正な事業者数にすることは概ね賛成です。過当競争になると結果として安全性がおろそかになることが多く見受けられるからです。
 しかしこのままではトラック事業者に勤めている人が独立して開業しようとすることができなくなる恐れがあります。建設業と同じくただでさえ若者の従業員が少ない業界ですので、重要なライフラインであるトラック業界が魅力のない業界になってしまう可能性があります。

 規制強化も必要ですが、国土交通省はトラック業界を魅力や夢のある業界にしていくことも求められると思います。

回答者 行政書士 久々宮典義
一般貨物運送業 建設業 建設関連業 産廃収集運搬業 宅建業などの各種許認可申請
くぐみや行政書士事務所  行政書士 運行管理者(貨物) 久々宮典義
〒815-0032 福岡市南区塩原4丁目14番13号 ルネサス大橋101
TEL 092-213-0606  HP : http://www.kugumiya.com/
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