前回、 UBERが福岡で実験をしていた 「ライドシェア」という一般ドライバーの乗用車に相乗りするシステムが国土交通省から中止の行政指導を受けたことをご紹介しました。
新しい事業を始めるのに、法令に抵触していない (違法でない)かを確認するのはとても重要なことです。 せっかく設備投資をして事業を始めたものの、法令に抵触することになり、中止することとなれば大変な損失です。
今回はそのような時に活用できそうな 「法令適用事前確認手続 (いわゆる日本版ノーアクションレター制度)についてご紹介したいと思います。
【 新しい事業を始めるにあたって 】
日本のように成熟した社会では、既存の法令に基づく許認可事業だけでは新たな収益をあげることは難しくなってきており、新しい斬新な発想のもと革新的な事業が生み出されてきています。
新しい事業を始めるにあたっては、法令に抵触しないか確認してから着手することが必要です。
法令に抵触することとなったらその事業を中止することになってしまったり、事業の中心となる部分の変更をせざるを得なくなることになりかねません。
しかしこのような革新的な事業は、既存の法令ですべてを網羅されるとは限りません。法令はどうしても過去に問題が発生した場合などに改正や創設されているからです。
法令に抵触するかしないかわからず不明確なままであれば、事業活動が委縮してしまう可能性もあります。
【 法令適用事前確認手続の流れ 】
そこで法令適用事前確認手続(いわゆる日本版ノーアクションレター制度)というものを活用することを検討すると良いと思います。ほとんどの行政機関で導入されています。
今回は私が最も関係することが多い国土交通省の法令適用事前確認手続の概要を確認してみようと思います。 (参考:国土交通省HP http://www.mlit.go.jp/appli/file000015.html)
国土交通省では所管する法令(条項)について、以下の照会ができます。
自ら行おうとする行為が、
@ 法令(条項)基づく不利益処分の適用の可能性があるかどうか
A 法令(条項)に基づく許認可等を受ける必要があるかどうか(許認可等を受けない場合、罰則の対象があるかどうか)
照会するのに必要な事項は以下のとおりです。
@ 将来照会者自らが行おうとする行為に係る個別具体的な事実
A 適用対象となるかどうかの確認したい法令の条項
B 当該法令(条項)の規定の適用対象となるかどうかについて、見解及びその結論を導き出す論拠
C 照会及び回答内容(法令(条項)の性質上照会者名を公にすることが回答に当たって必要とされる場合にあっては、照会及び回答内容並びに照会者名)が公表されることへの同意
【 照会の手続きをした結果について 】
照会をすると、原則として照会書を提出してから30日以内に回答がもらえます。
ただし、回答をもらってから原則30日以内に、照会内容、回答内容(照会者の同意があるときは、照会者名も)が国土交通省のホームページで公表されます。 (公表遅延希望を申し出ることもできます。 )
公表されてしまうので、こっそり新事業をスタートしようと思っている方にはちょっと利用をためらうかもしれません。公表する理由はいわゆる「事例集」としての利用を目的としているようです。私も今回公表されたものを改めて見てみましたが、考え方や解釈の仕方などとても参考になるものでした。
なお、回答は照会者から提示された事実のみを前提に照会対象法令(条項)の所管の立場から見解を示すもので、その意味で事前の情報提供という意味をもっています。
したがって、捜査機関の判断や罰則の適用を含めた司法判断を拘束しうるものではありません。
具体的な計画があって、法令の解釈・適用の判断に迷うときは是非利用されてみて下さい。私自身、実は利用したことがないので、一度利用してみたいと常々思っています。具体的な計画があってお悩みの方は一度お気軽にご相談ください。
回答者 特定行政書士 久々宮典義
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