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福岡!企業!元気!のための許認可事業のココロエ 《平成28年11月号》
ウーバー・イーツ(UBER EATS)について考える

 本コラムの第44号(平成27年4月号)で取り上げました「UBER」ですが、新たなサービスを日本でも開始したようです。
新たなサービスとは提携したレストランなどの料理を指定場所に届ける宅配サービス「ウーバー・イーツ」というものです。日本では東京都内の渋谷区や港区でスタートしているようです。
今回はこの「ウーバー・イーツ」について、法的・許認可的視点から見てみようと思います。

【ウーバー・イーツとは?】
 サービスを提供している会社は、アメリカの配車サービスアプリ大手のウーバーテクノロジーズの日本法人ウーバージャパンのようです。
 このウーバーは、昨年福岡で配車サービス「ライドシェア」という一般ドライバーの乗用車に相乗りをする実験をしたところ、道路運送法に抵触する可能性(白タク)があるとして、国土交通省から中止の行政指導を受けました。道路運送法に抵触するとは、有償での旅客の運送は許可が必要だとされている点です。

 そこで今回開始した「ウーバー・イーツ」とは、どのようなものなのでしょうか?
 新聞記事などから判断して簡単に述べると、「提携したレストランなどの料理を指定場所に配達する」というサービスのようです。ウーバーに登録された個人ドライバーが、レストランなどから各家庭などの指定された場所に料理を配達する都度、また配達した距離に応じて報酬が週単位で支払われるようです。

【貨物自動車運送事業法違反ではないのか? 】

 このサービスに許認可上問題になってくる法令は「貨物自動車運送事業法」です。
 貨物自動車運送事業法には、貨物自動車運送事業は「他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して貨物を運送する事業・・・」と規定されています。
 こうして見てみると、第三者が報酬をもらって物を運ぶのは、上記の規定に完全に違反しているように見えます。「ライドシェア」で行政指導を受けたのに、また同じようなことをしているのかと思ったら、今回は法令に違反はしていないようです。

 どの点が法令に違反していないのかをこれから述べていきたいと思います。

【なぜ貨物自動車運送事業法違反ではないのか? 】

 先程提示した貨物自動車運送事業法には「自動車を使用して」と規定されています。

 ここがポイントなのですが、ウーバー・イーツで配達する人は「自転車または125CC以下の原付バイク」で配達するようなのです。

 まず、自動車とは何なのかという点を法的に確認してみたいと思います。  以前このコラムでも法令による車種区分をとりあげました(58号 平成28年6月号、59号平成28年7月号)が、道路運送車両法では、車両は「自動車」と「原動機付自転車」の2種類に区分されています。
 つまり「自動車」は「原動機付自転車」を除くすべての車両なのです。乗用車も軽自動車もトラックもバスも農耕用トラクターもすべて「自動車」です。
 二輪車については、125CCを超えて250CC以下のバイクは「軽自動車」、250CCを超えるバイクは「小型自動車」とされています。
 なお、原動機付自転車は、「第1種原動機付自転車(50CC以下」と「第2種原動機付自転車(50CCを超えて125CC以下)」に区分されています。

 この車両の区分を踏まえて、貨物自動車運送事業法に戻ってみます。
 先述のとおり「自動車を使用して」と規定されていますが、上記の区分のとおり125CC以下の原付バイクは、自動車ではないのです。原動機付自転車なのです。
 貨物自動車運送事業法には原動機付自転車や自転車で運送することに関して規定がないため、許可の対象になっておらず、無許可での罰則の規定も対象になっていないのです。そのため貨物自動車運送事業法違反とは直ちに言えないのです。

 でもバイクで有償で物を配達しているバイク便はどうなのか?という点ですが、これは貨物軽自動車運送事業に該当します。貨物自動車運送事業法では、貨物軽自動車運送事業は自動車で運送する事業とされていますが、「3輪以上の軽自動車及び二輪の自動車に限る」と限定されています。
 ここでも原動機付自転車は含まれていないのです。もちろん自転車も含まれていません。  今回のウーバー・イーツは見事に法の抜け穴?を活用したと言えるでしょう。ただ、今後事故やトラブルなどが発生してくれば、ドローンが航空法の規制の対象となったように、原付バイクや自転車での運送も規制の対象になるかもしれませんね。

回答者 特定行政書士 久々宮典義
一般貨物運送業 建設業 建設関連業 産廃収集運搬業 宅建業などの各種許認可申請
くぐみや行政書士事務所  特定行政書士 運行管理者(貨物) 久々宮典義
〒815-0032 福岡市南区塩原4丁目14番13号 ルネサス大橋101
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