令和元年6月15日から、ドライバーが荷役作業や附帯業務を行った場合、当該作業は「乗務記録」の記載対象になりました。
今回はこの改正について取り上げてみようと思います。対象となる車両や事業者は必ず記載漏れがないようにして下さい。
【 改正の背景 】
貨物自動車運送事業輸送安全規則が改正され、本年6月15日に施行されました。
運送業界では、ドライバーの長時間労働の是正が課題となっていますが、長時間の荷待ち時間に加え、荷主との契約に定めがない荷役作業等の発生により当初の運行計画が崩れることが、ドライバーの拘束時間に関する基準を超過する状況を招き、コンプライアンスを確保した運行を妨げる一因となっています。
国土交通省では、今回の改正でより詳細に荷役作業等の実態を把握することで、運送業者と荷主の協力による改善の取り組みを一層促進し、運送業者やドライバーに対して過度な要求をし、長時間労働を生じさせている荷主に勧告等を行うにあたっての判断材料とするとのことです。
【 対象となる内容や車両等 】
対象車両 車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上の車両に乗務した場合
対象作業 @荷役作業 積込み、取卸し
A附帯業務 荷造り、仕分け、横持ち・縦持ち、棚入れ、ラベル貼り、はい作業
記録内容 @集荷地点等(集荷または配達を行った地点)
A荷役作業等の開始及び終了の日時
B荷役作業等の内容
C@からBまでの事項について荷主の確認が得られた場合は荷主が確認したことを示す事項。確認が得られなかった場合はその旨
※ 契約書に実施した荷役作業等のすべてが明記されている場合は、荷役作業等の時間が1時間未満であれば、荷役作業等についての記録は不要です。
つまり契約書に作業がすべて記載されていても、1時間以上であれば記録が必要です。
契約書にすべてが記載されていない場合や契約書に記載がまったくない場合などは、1時間未満であっても記録が必要です。)
※ 記録内容について、荷主が確認したか、あるいは荷主の確認が得られなかったかについても記録が必要です。
※ 記録が必要な事項について、デジタコなど他の方法で記録・保存をしている場合には、その項目については記録票への記載は不要とされています。
【 記録の様式などについて 】
では具体的にどのように記録をすればよいかという点ですが、国土交通省のホームページに様式例やQ&A、今回の改正に関するリーフレットが掲載されています。
http://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr4_000026.html
ここに公開されている様式を活用されても良いですし、必要事項を満たしていれば自社で独自の様式を作成してもOKです。
平成29年7月1日から開始した「荷主都合30分以上の荷待ちを乗務記録に記載する」で使っている様式に、今回の改正を加えてもよいかと思います。
【 終わりに 】
今回の改正は運転者の長時間労働を改善することが目的となっているようですが、これらの記録を国土交通省がきちんと把握して、荷主に改善の勧告をするのであれば、実効性はあるかと思います。しかし実際のところ事業者や運転者の負担が増えただけのように思えるのは私だけでしょうか。
大きな事故を起こして監査が入った時に、これらの記録を確認して荷主にも勧告をするのかもしれませんが、事故を起こした後では遅いですし、事前に巡回指導などで把握するようにして、積極的に荷主勧告をしないのであれば、絵に描いた餅になるのではないかと感じています。
回答者 特定行政書士 久々宮典義
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