平成30年12月14日に改正貨物自動車運送事業法が公布されましたが、8月1日に規制の適正化と事業者が遵守すべき事項の明確化に関する省令等が公布されました。施行は11月1日からになります。
関係通達の改正案に関するパブリックコメントも既に実施されていますので、実際の改正内容が具体化してきました。正直言って、不良業者は合法的に退場させ、適正に事業を遂行できなさそうな会社は新規許可を認めないという意図を感じます。
既存業者はより法令遵守を徹底することが求められていると思います。
【 関係省令等の主な内容(国交省プレスリリース) 】
(1)事業許可の欠格事由の対象となる「密接関係者」の範囲
改正法において、許可の欠格事由として、「許可を受けようとする者と密接な関係を有する者」 が5年以内に許可の取消を受けている場合が追加されたところ、密接な関係を有する者の具体的内容として、許可を受けようとする者の議決権の過半数を所有していること等を定める。
(2)事業許可の際の審査の拡充
許可時の審査事項について、申請前の行政処分歴を確認する期間や、資金計画に係る費用を計上する期間を延長する等の拡充を行う。
(3)事業計画の変更の際の審査の拡充
@ 事業計画における営業所に配置する車両数の変更については、現在、一律に事前届出の対象となっているところ、法に定める認可基準に適合しないおそれがある場合(法令遵守状況が十分でない場合等)については、認可の対象とすることとする。
A 事業規模の拡大となる事業計画変更の認可申請(営業所の新設等)について、法令遵守の状況に関する審査事項を拡充することとする(貨物自動車運送適正化事業実施機関による適正化事業の結果等を踏まえ、法令遵守が十分に行われていないと認められるものでないこと 等)。
(4)その他 事業許可基準、事業者の遵守義務の明確化 等
【 新規許可に関する改正点(車庫) 】
自動車車庫について、現在の許可事案の処理方針では「原則として、営業所に併設されるものであること。 ただし、併設されることが困難な場合においては、営業所から直線で5キロメートル (政令指定都市にあっては10キロメートル) 以内であること。」とされていますが、改正輸送安全規則で「輸送の安全に係る基準として、自動車車庫の位置に関する基準(原則として営業所に併設すること等)を位置づける。」とされています。
「原則として」という言葉は残っているのですが、今までのように5キロメートルとか10キロメートルなどの例外は認められなくなるかもしれません。
また契約期間が今までは1年以上となっているところが2年以上になります。
【 新規許可に関する改正点(資金計画) 】
これまで人件費、燃料費、油脂費、修繕費については、2ヶ月分を計上することになっていましたが、これが6ヶ月分を計上することになりました。
また、車両費、施設購入・使用料について、これまで6ヶ月分を計上することになっていましたが、これが12ヶ月分を計上することになりました。
新規許可を申請する際に、一番ネックになるのがこの資金計画のところです。
人件費と燃料費、車両費、施設使用料(車庫や営業所の賃料等)が必要資金の大部分を占めますので、今回の改正で大幅に必要資金のアップが想定されます。
参考までに最近申請した会社のパターンで試算してみたところ、以下のような感じになりました。
A社 これまでの基準での金額 約1300万円 → 新基準での金額 約2300万円
B社 これまでの基準での金額 約850万円 → 新基準での金額 約2200万円
C社 これまでの基準での金額 約920万円 → 新基準での金額 約2100万円
このように通常の運転手を長年やってきて、やっと独立をしようと思って簡単に用意できる金額ではなくなりました。運転手から独立して開業するというパターンはかなり厳しくなりそうです。
今後の新規許可取得は大手の会社が子会社を設立するなどのケースくらいしかできなくなりそうです。このケースでも要件が厳しくなってきていますので、次回は欠格要件や密接関係者、認可申請などについて取り上げてみたいと思います。
回答者 特定行政書士 久々宮典義
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