リスク法務実務研究会は、弁護士、税理士、社会保険労務士、司法書士、行政書士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、弁理士、ファイナンシャルプランナー、保険代理店等の各種専門家によって構成する任意団体です。

　平成３１年４月から建設キャリアアップシステムの本格運用が始まりましたが、この建設キャリアアップシステムに登録すると送付されてくるＩＣカード（キャリアアップカード）について、先日困ったことがありましたので、それをご報告したいと思います。

【 建設キャリアアップシステムとは 】

　まず建設キャリアアップシステムについてですが、この制度を説明するのが今回のコラムの本旨ではないので、ごく簡単に説明しますと、国土交通省が推進する建設業に関わる技能者の資格、社会保険加入状況、現場の就業履歴などを登録・蓄積し、技能者の適正な評価や建設事業者の業務負担軽減に役立てるため仕組みのことです。
　略称はＣＣＵＳで、このシステムは、一般財団法人建設業振興基金が運営主体となっています。

【キャリアアップカードとは 】

　キャリアアップカードとは、技能者の技能について４段階の客観的なレベル分けがされ、以下のようにカードの色分けがされています。
　レベル１　　初級技能者（見習）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　白色のカード
　レベル２　　中堅技能者（一人前）　　　　　　　　　　　　　　　　　　ブルーのカード
　レベル３　　職長として現場に従事できる者　　　１級〇〇技能士等　　　シルバーのカード
　レベル４　　高度なマネジメント能力を有する者　登録基幹技能者等　　　ゴールドのカード

【登録が完了したけど・・・】
　ここからが本題ですが、ある事業者様から建設キャリアアップシステムの登録代行を依頼され、手続きをしました。コロナ拡大の第１派にも重なり時間がかかりましたが、無事に登録が完了し、先日お客様のところにカードが届いたようで、お客様から連絡がありました。
　ところが開口一番、こう言われたのです。

　「カードの色が白色なんやけど、俺は１級〇〇技能士を持っているからカードの色はシルバーじゃないの？申請の時に１級〇〇技能士の資格者証を提出したのになんで？何か手続きを間違えてるんじゃないの？」

【 なぜ白色のカードが送付されてきたのか？ 】
　１級〇〇技能士の資格者証を建設キャリアアップシステムに提出したのに、なぜ白色のカードが送られてきたのでしょうか？前頁のキャリアアップカードの基準では「１級〇〇技能士」の資格を持っているとシルバーカードのはずです。

　実は建設キャリアアップシステムに登録すると送付されてくるカードはレベル１の白色のカードが原則で、１級〇〇技能士の有資格者であっても届くカードは白色のカードなのです。
（特例期間中には、登録基幹技能者の有資格者は最初からゴールドカードが送付されてきます。） 　

【どうすればシルバーカードをもらえるのか？ 】
　今年の４月１日からレベルに応じたカードが発行されることになったのですが、これは建設キャリアアップシステムに登録すると自動的にレベルに応じたカードが送付されてくるわけではなく、別途４月１日からスタートした「レベル判定システム」に申請しなければならないのです。 　簡単に説明すると以下のようになります。
　�@　建設キャリアアップシステムの技能者登録を完了させる。（原則として白色カードが届く）
　�A　レベル（カードの色）をアップさせるためには、レベル判定システムに申請する。
　�B　レベル判定システムの審査で認められれば、レベル（カードの色）がアップする。

　また、建設キャリアアップシステムに登録していたら自動的にレベルが上がっていくわけではく、例えば上位資格を取得したり、実務経験期間を満たしたら、自らレベル判定システムに申請をしなければならないのです。

【最後に 】
　電話をしてきたお客様には上記のとおりカードの色をアップさせるには、建設キャリアアップシステムに登録されてから、別に手続きが必要であることを説明しましたが、理解してくれません。なんだかお客さんの信頼を失ったようで、とても憂鬱な気分になりました。
　私が最初にきちんと説明しておけばよかったのですが、もう少しキャリアアップシステムもこの点をわかりやすく説明した書類を同封してカードを送付して欲しいと感じました。
　あともう一言付け加えると、事業者に手間や負担を強いる（どちらのシステムも申請手数料がかかる）システムを２つ作るのでしょうか？ひとつのシステムで対応できないのでしょうか？
　なんともスッキリしない手続きだなぁと強く感じました。