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□■□ 『中小企業のための経営支援情報』第40号 □■□
福岡☆リスク法務実務研究会
◇◆◇ コピーは問題? ◇◆◇

 

 コンピュータ機器の普及によって、様々なものを簡単にコピーすることができるようになってきました。
 例えば、音楽、映画、書籍、写真などのデジタルコンテンツは、パソコンによって簡単にコピーができます。
 総務省の調査によれば、パソコンの世帯普及率は、85.9%(平成20年)ですから、パソコンによるコピーはかなり身近なものになっているのではないでしょうか。
 デジタルコンテンツには、一般に著作権が存在していますので、デジタルコンテンツのコピーが法律上許されるのかどうかを知っておく必要があります。

 著作権法の第21条には、「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する(複製権)」が規定され、この複製権を侵害すると、損害賠償請求、差し止め請求のほか、悪質な場合には刑事罰を受けることがあります。
 一方で、著作権法では、侵害とならない種々の複製行為を規定しています。
 例えば、私的使用のための複製(30条)、引用(32条)、時事問題に関する論説の転載等(39条)、政治上の演説等の利用(40条)などがあります。

 この中で多くの方に共通に関係するものは、私的使用のための複製(30条)でしょう。
 私的使用のための複製(以下、「私的複製」とします)とは、個人的又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲において使用することを目的とする複製です。
 私的複製の例として、例えば、借りたCDをダビングする行為、TV番組を録画する行為、雑誌を撮影する行為などがあります。
 一方、私的複製でない例として、例えば、業務上で使用するために他人のコンテンツを複製する行為、映画館での映画を撮影する行為、DVDのコピーコントロールを解除する行為などがあります。

 最近の法改正では、著作権を侵害してアップロードされていると知りながらデジタルコンテンツをダウンロードする行為は違法であることが規定されました。
 ただし、ダウンロードすることなく、デジタルコンテンツを閲覧する行為(コンピュータ内にキャッシュとして保存する場合)は、従来通り、著作権を侵害することにはなりません。
 このように、コピーは違法になるかどうかは行為毎に異なりますので、ご注意ください。

 

弁理士 中嶋 裕昭

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≪事務局より≫  弁理士の中嶋裕昭先生は、業務多忙のため、今回を最後にメルマガ執筆メンバーを辞任されることになりました。
 中嶋先生、約1年の間に3回のメルマガ執筆をご担当頂き、本当に有難うございました。
《執筆メンバー》  弁護士3、税理士2、社会保険労務士4、行政書士3、司法書士1、弁理士1、不動産鑑定士1、ファイナンシャルプランナー2、保険代理業1(計18名) ■発 行  福岡☆リスク法務実務研究会
■メール  risk@riskhoumu.com
■ブログ  http://blogs.yahoo.co.jp/hokenhoumu
■メルマガ http://www.mag2.com/m/0001120380.html
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□■□ 『中小企業のための経営支援情報』第39号 □■□
☆リスク法務実務研究会☆
◇◆◇ 死亡保険金の受取人について ◇◆◇

 現在日本で営業している生命保険会社は47社あります。
 戦前から営業している老舗の漢字系生保やテレビCMでおなじみの外資系生保、カタカナの社名が多い損保系生保に加え、最近ではインターネットで加入できるネット系生保も登場しています。
 ちなみにこれらの保険会社に加入している人々が皆死亡したとすると、総額で約1000兆円の死亡保険金が支払われることになります。

 万が一に備えて加入する生命保険ですが、加入後時間が経つにつれて契約内容の記憶も薄れていくという方が多いようです。
 保険の世話にならないということは幸せなことかもしれませんが、あまりにフォローを怠るとこんなこともありえます・・・。

例)家族構成  父親 (2005年死亡、母親とは再婚であり前妻との間に3人の子あり)
        母親 (2008年死亡)
        長女 (独身、この度死亡)
        次女 

≪契約内容≫
 契約者      長女
 被保険者     長女
 死亡保険金受取人 母親

 

 この度長女が亡くなり死亡保険金が支払われることになりましたが、受取人の母親はすでに死亡しており、受取人変更の手続きもされておりません。
 このような場合死亡保険金は法定相続人に支払われるわけですが・・・。

 上記の例でいくと死亡保険金は生存している次女と、父親の前妻との間に生まれた異母兄弟3人の合計4名で均等に受け取ることになります。
 亡くなった長女からすれば自分の死亡保険金が面識もない異母兄弟へ支払われるとは思いもよらなかったでしょうし、仮に妹さんが長女の看病をしていたとすれば、「そんな理不尽な!」と思われたことでしょう。

 昨年の4月から保険法が施行され、死亡保険金の受取人変更は従来のように「書類が保険会社に到着してから」有効となるのではなくではなく、「契約者が保険会社に変更の意思を告げた時」から有効になりました(もちろん書類の提出は求められますが)。
 保険金受取人が死亡した時にはとりあえず保険会社のコールセンターに連絡し、本来の目的に適った受取人を再指定することをお勧めいたします。

ファイナンシャルプランナー 江口 信也

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□■□ 『中小企業のための経営支援情報』第38号 □■□
福岡☆リスク法務実務研究会
◇◆◇ 嫡出推定制度に関する問題点と法改正について ◇◆◇

 民法第772条は嫡出子の父についての推定規定ですが、第2項で婚姻成立から200日後または婚姻解消・取消から300日以内に生まれた子について、子の父を母の前夫であると推定しています。
 これは父子関係を早期に確定して、子の福祉を図るための規定です。
 しかし、近年の離婚や再婚の増加、医学的進歩による早期出産など、社会情勢の変化に伴い、前夫以外の男性の子を離婚後300日以内に出産するケースが散見され、この規定により、かえって子の福祉を害する問題が生じています。

 嫡出推定が及ばないのは、前夫の海外赴任、服役、事実上の離婚等、外観上懐胎が不可能であることが明らかな場合に限られます。
 前夫の子でないことを法律上確定させるには、前夫の子として出生届を出した上で、家庭裁判所で「嫡出否認」や「親子関係不存在確認」の調停・審判や訴訟などの法的手続きをとる必要があります。
 これらの手続は、当事者にとって精神的、経済的な負担となる上、前夫と子の親子関係がないことを調べるため、DNA鑑定等、前夫の関与が必須となります。
 しかし、子が前夫の戸籍に記載されることや、ドメスティックバイオレンス(DV)等の理由で前夫が手続きに関与することを避けたい場合などに母親が出生届を出さず、子が無戸籍となる等の問題が生じています。

 最近の判例を紹介します。
 岡山県の女性が平成18年に前夫と結婚した直後からドメスティックバイオレンスを受けて別居し、平成20年に離婚。
 離婚後に出産した女児を現夫の子とする出生届を提出しましたが、離婚前の妊娠であることを理由に受理されませんでした。
 「離婚後300日以内に生まれた子を前夫の子と推定する民法の規定により、出生届を受理しなかったのは、法の下の平等に反して憲法違反である」として、女性が国と同県総社市に330万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、広島高裁岡山支部は、不受理は合憲とした原告敗訴の一審岡山地裁判決を支持、女性の控訴を棄却しました。
 裁判長は判決理由で「市が民法などに従い出生届を受理しなかったことは妥当で、憲法に違反しない」とあらためて指摘しています。
 女児は一時無戸籍となりましたが、平成21年に家裁の審判で現夫との親子関係が認められて出生届が受理され、戸籍が作成されました。

 平成19年5月17日法務省民事局の通達により、医師の「懐胎時期に関する証明書」により婚姻の解消又は取消後に妊娠したことが証明できれば、離婚前の夫の子として出生の届出をしなくてよいとする取扱いが平成19年5月21日より始まりました。
 しかし、この通達の運用で問題が解消できるケースはごくわずかでしかありません。

 民法第772条は、父子関係の成立という身分関係の根幹にかかわる規定です。
 嫡出推定制度に関する問題点の解決は、本来、通達による運用ではなく、基本法である民法の改正が必要不可欠であると考えます。
 一方で、現行民法の嫡出推定制度が守ろうとした父子関係の早期安定による子の利益保護を図るという価値も極めて高く、事情によっては、血縁関係の有無の科学的証明による父子関係確定の要請を上回る場合もあり得るでしょう。

 父、母、子それぞれの事情をふまえて、各当事者の利益保護の調和が図られるよう、十分考慮した上で、選択の幅が拡がる法改正がなされることを期待します。

 

行政書士 田村 公隆

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□■□ 『中小企業のための経営支援情報』第37号 □■□
福岡☆リスク法務実務研究会
◇◆◇ インターネットを活用した決算公告 ◇◆◇

 合名・合資会社が組織変更して株式会社になったり、特例有限会社が商号を変更して株式会社になるケースも多いことと思います。
 個人が法人成りする場合や、合名・合資・有限会社が株式会社に変更する理由として、税務上の問題や、信用力の向上等があると思いますが、一方で、デメリットと言えるかどうかは分かりませんが、会社の規模とは関係なく決算公告義務が発生します(会社法440条1項)。
 これを怠ったり、不正の公告をしてしまうと、代表者は100万円以下の罰金に処せられる(会社法976条2号)という制裁規定があります。

 会社法上、株式会社が公告をしなければならない場面は、実は数多くあり、例えば、株券廃止(会社法218条1号)の際の株主等への通知公告や、資本金の額の減少や合併・会社分割等組織再編を行う場合の債権者異議申述公告、反対株主の株式買取請求権の機会を確保するための通知公告等があります。
 これらは、株主総会や取締役会での決議で可決して初めて必要となってくる公告ですが、決算公告は決算期毎に必ずしなければなりません。
 つまり、株式会社であれば必ず最低でも年に1回会社の決算を公告する義務があります。
 会社法では、旧商法の規定を引き継ぎ、会社の公告をする方法とは別に、ホームページによる計算書類の公開が認められています(会社法440条3項)。
 会社がインターネットで決算公告を行うことによって、官報や日刊新聞紙に決算公告を掲載するのと比較し、かなりのコストの削減が可能です。
 ただし、手続き上では以下の点に注意する必要があります。

・ 官報や日刊新聞紙に掲載される貸借対照表はその要旨のみの簡略化したものの公開で足りますが、インターネットを利用した決算公告の場合はその要旨のみでは足りず、貸借対照表全部(注記を含む)の掲載が必要。
・ 貸借対照表を掲載するホームページのアドレスを登記しなければならない。
・ 一度掲載した貸借対照表は5年間継続して掲載が必要。

 なすべき登記を怠ったことで過料の制裁を受けたという話はいくらでも耳にしますが、決算公告を怠ったことで会社経営者が罰金の制裁を受けたという話は今のところ聞いたことがありません。
 しかし、会社法に規定がある以上、請求されれば文句は言えません。
 法令は遵守しなければいけないと思いつつも、官報や日刊新聞紙への掲載は費用が掛かり過ぎるとお考えであれば、インターネットを活用した決算公告を検討されてみてはいかがでしょうか。

                             

司法書士 安藤 功(福岡県司法書士会)

 
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□■□ 『中小企業のための経営支援情報』第36号 □■□
福岡☆リスク法務実務研究会
◇◆◇ 法人破産、再生手続について ◇◆◇

   

 企業にとってのリスクは多々ありますし、そのリスクを回避できるように私たち研究会では勉強会を重ねています。
 しかし、そのリスクを乗り越えられなくなったらどうなるのか。
 いわゆる会社の倒産手続きとなってしまいます。
 そこで、簡単に倒産手続きの説明をします(ここでは極めて簡単な説明のみです。
また、個人破産、個人再生の説明は含みません)。

 破産は清算型倒産手続きと言われます。
 支払い不能もしくは債務超過となった法人が裁判所に破産を申立て、その時点の財産を債権者に対し、公平に分配することになります。
 従業員は当然に解雇となりますし、最終的に法人は消滅します。

 再生はその名のとおり再建型の手続きです。
 支払い不能もしくは債務超過となるおそれのある法人が再生を申立て、その後の再生計画の認可(債権者の一定割合の同意が必要です)を得て、一般に10年かけて債務の一部を弁済するものです。
 せっかく築いた会社ですから、破産だけは避けたい、ということで再生を目指すことも多いですが、再生手続きはなかなか大変です。
 まず、再生手続きを申し立てると銀行は融資してくれなくなります。
 その状況で資金繰りがまわるのかよく確認する必要があります。
 再生手続きを申し立てた会社に対しては、取引先も従前通りつきあってくれるとは限りません。
 また、再生計画に債権者が同意してくれるためには、破産よりも債権者にとって有利だ、と債権者に思わせる必要があります。
 すなわち再生のビジョン(長期に黒字確保の見通し)があり、破産以上に弁済率が高いと債権者に納得させることが必要です。

 さらに、再生手続の場合の裁判所予納金、弁護士費用はそれなりに高額です。
 負債総額によりますが、それぞれに数百万円以上となるとお考えください(破産申立でもそれなりに高額です)。
 これらがそろわなければ、再生手続きは難しいのが現実です(再生申立件数と破産申立件数では、圧倒的に破産件数のほうが多い)。

 まじめな経営者ほど債権者に迷惑をかけまいと、ぎりぎりまで金策に走り、私財を投げ出し、経営努力をした結果、最後には破産申立費用も残されていないことも少なくありません。
 家族全員で事業をしており、その事業がうまくいかなくなると、本当に一家の生活自体が危機的なことになる場合もあります。
 再生、破産をするとしても、一定の計画性が必要です。
 このような本当に危険な事態を招かないためには、保険と思って、普段から信頼できる税理士、会計士、弁護士等と連携をとり、経営チェック、経営相談をされることをおすすめします。

 

弁護士 小川 剛

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□■□ 『中小企業のための経営支援情報』第35号 □■□
福岡☆リスク法務実務研究会
◇◆◇ 若年者雇用と奨励金制度 ◇◆◇

 

 新年明けましておめでとうございます。
 リスク法務実務研究会のメルマガは、昨年3月から開始し、皆様のお陰様で本年を迎えることができました。
 本当に有難うございます。
 本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

◆新年配信スケジュールについて
 通常、毎週月曜日に配信致しておりますが、新年は次のように配信致します。
 第35号 平成23年1月6日(木)本号です
 第36号 平成23年1月17日(月)
 第37号 平成23年1月24日(月)
 1月1週目が休刊で、2週目分を1月6日に前倒しした形です。
 よろしくお願い致します。

 景気低迷が長引き、特に新卒者の雇用情勢が「氷河期」よりも厳しいなどといわれています。
 そのような中、政府も若年者雇用に対して奨励金制度を拡充する等の対策をしているようです。
 ただ、「バラマキ」の批判が多いことは事実です。
 実際、若年者を雇用し、奨励金が支払われたとしても、その雇用された若年者が安定的に継続勤務するかというと、必ずしもそうではありません。
 個人的には、このような奨励金制度のあり方には強く疑問を感じております。

 しかし、これから雇用を検討している事業所にとって、奨励金制度は魅力的な制度となる可能性があります。
 本稿は、若年者雇用に関する奨励金制度を紹介したいと思います。

【トライアル雇用奨励金】
 以前から存続している奨励金制度として、試行雇用(トライアル雇用)奨励金制度があります。
 「試行」雇用とは、公共職業安定所の紹介により3カ月間の有期雇用契約を締結し、3カ月間「お試し」で雇用します。
 この期間3カ月間について、月額4万円(3カ月間で最大12万円)を助成する制度が、試行雇用奨励金制度です。
 新卒者は、基本的に対象となります。
対象者は、40歳未満の若年者等です。
 助成金額は大きくありませんが、3カ月お試し雇用の結果、雇用期間満了で終了しても受給できます。

【若年者等正規雇用化特別奨励金】
 この奨励金は、平成24年3月までの期間限定の制度です。
 新卒者採用とは少し離れますが、「満25歳以上40歳未満」の年長フリーター等を公共職業安定所紹介で雇用した場合に助成する制度です。
 「年長フリーター等」とは、雇用前1年間に雇用保険被保険者になったことが無い者とされています。
 したがって、少し浪人や留年があった場合や、新卒後少し経過しているような方で25歳以上になっていれば、対象となる可能性があります。
 この奨励金は、公共職業安定所の紹介でいきなり正規雇用しても対象となりますが、既に紹介した「トライアル雇用」を経て正規雇用した場合も対象となります。
 いきなり正規雇用するリスクを考えると、トライアル雇用活用型の方がリスクが軽減できる点で良いといえます。

 奨励金額は、中小企業の場合で正規雇用6カ月経過後に50万円、正規雇用1年6カ月経過後に25万円、正規雇用2年6カ月経過後に25万円、合計100万円です。

【3年以内既卒者(新卒扱い)雇用拡大奨励金】
 昨年秋にスタートしたばかりの新目玉制度で、平成24年3月までの期間限定です。
 卒業後3年以内の既卒者で、1年以上雇用された経験のない者を公共職業安定所紹介で正規雇用した場合、6カ月経過後に100万円を支給する、という制度です。
 6カ月後の100万円だから、かなり大きな奨励金といえます。

 

【3年以内既卒者トライアル雇用奨励金】
 こちらも「3年以内既卒者(新卒扱い)雇用拡大奨励金」と同時にスタートしたばかりの新しい制度で、平成24年3月までの期間限定です。
 この制度は、既に紹介したトライアル雇用奨励金と同じような要領で卒業後3年以内の既卒者を3カ月間「お試し」雇用する制度で、お試し雇用の結果、3カ月で終了しても奨励金支給の対象となります。
 しかも月4万円でなく、月10万円です(3カ月間で30万円)。
 3カ月経過後に正規雇用に移行すれば、そこから3カ月後にさらに50万円支給されます(トータル80万円)。
 最初から正規雇用すれば6カ月後に100万円ですが、雇用リスクも伴います。
 その点、3カ月間のお試し雇用期間に考課が可能な点は、リスクを軽減できるといえるでしょう。

 

特定社会保険労務士 安藤 政明

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□■□ 『中小企業のための経営支援情報』第34号 □■□
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◇◆◇ 営業秘密 ◇◆◇

 

 不正競争防止法が平成22年7月に改定されました。
 営業秘密侵害罪の「範囲」が拡大しましたが、まだまだ実務との乖離が大きいようです。
 方向性は歓迎すべきものですが、企業を守るにはまだまだ多くの課題が残されています。

 よくある事例として、いくつか挙げてみます。
 ・独自のノウハウを持つ従業員が、競合他社に転職し、そのノウハウを競合先で使用。
 ・ある部門を担当する従業員が、ごっそりと退職してそのまま独立し、お客様ごと失ってしまった。

 法改正により、このような侵害について刑事罰に問える可能性は高くなりました。
 「可能性」に過ぎませんが。
 法改正による変更点の主な事項は、次の3点です。

 ・営業秘密侵害罪の目的要件の変更
 ・第三者による営業秘密の不正な取得に対する刑事罰の対象範囲の拡大
 ・従業員等による営業秘密の領得自体への刑事罰の導入 

       

 事業所にとって特に重要な改正は、3番目の「営業秘密の領得」です。
 改正前は営業秘密を持ち出すだけでは罰せられず、競合他社に漏らしたり開示して初めて罰則が適用されることになっていました。
 改正後は利益を得るためや、事業所に損害を与えることを目的として営業秘密を不正に持ち出すと、それだけで違法となります。
 故意であることが要件です。
 実際に故意であることを証明できるかどうかが問題ですが。

 従業員に対する罰則適用の範囲が拡大されましたが、他方では他社から訴えられるリスクが高まった面もあります。
 従業員が業務上、他社の営業秘密を侵害すると、本人だけでなく事業所に対しても3億円以下の罰金が科されるのです。
 業務上、他社から顧客名簿や一般に知られていない情報等を預かっている場合、管理を厳しくする必要があります。

 事業所の財産である営業秘密の漏洩を防ぐにも、他社の営業秘密を漏洩を防ぐにも徹底した管理が求められます。
 例え営業秘密の管理規定等を作っていても、実際に運用されていなければ意味がありません。
 営業秘密を扱う従業員の人選を慎重に行い、常日頃からリスクや重要性を認識させる指導が必要だといえます。

 

特定社会保険労務士 箭川 亜紀子

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《年末年始に関するお知らせ》  いつもリスク法務実務研究会のメールマガジンをご愛読いただき、有難うございます。
 おかげさまで、18名の執筆メンバーが毎週発行を続けております。
 御迷惑をおかけいたしますが、年末年始は少しお休みをいただきます。
 今回の第34号を、本年最後の配信とさせていただきます。
 平成23年は、1月11日(火)から配信予定です。
 来年も引き続きよろしくお願い致します。

 リスク法務実務研究会 主宰 安藤 政明 《執筆メンバー》  弁護士3、税理士2、社会保険労務士4、行政書士3、司法書士1、弁理士1、不動産鑑定士1、ファイナンシャルプランナー2、保険代理業1(計18名) ■発 行  福岡☆リスク法務実務研究会
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□■□ 『中小企業のための経営支援情報』第33号 □■□
福岡☆リスク法務実務研究会
◇◆◇ 業務上過失致死罪 ◇◆◇

 

 本メルマガ初寄稿です。
 デビューにふさわしいトピックをと悩んではみたのですが、目の前の法律系雑誌表紙にある「パロマガス湯沸器事件」の大きな文字が気になりまして。
 今日は、業務上過失致死罪について少し書いてみようと思います。

 刑法は、「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。
ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。」と定めています。
 わが国では、原則として、故意(罪を犯す意思)のない行為は処罰されません。
 業務上過失致死罪は、例外的に「過失」犯が処罰される「特別の規定」ということになります。

 では、過失犯とは何でしょう?
 過失犯が成立するには、注意義務違反が必要とされます。
 注意義務というのは、「結果を予見すべき義務」とその「結果を回避すべき義務」から成っていて、結果を予見すべき義務を負っているのにこれを予見せず、また、予見した結果を回避すべきなのに回避しなかった場合、注意義務違反となります。

 さて、平成17年、パロマガス湯沸器の「不正改造」を原因とする不完全燃焼で、一酸化炭素中毒による死傷者が出ました。
 不正改造を行ったのは、修理業者さんです。
 でも、東京地裁は、パロマの代表取締役社長及び品質管理部長に、湯沸器の点検・回収等の措置を講じなかった過失があるとして、業務上過失致死傷罪の成立を認めました。
 詳細は省きますが、パロマでは、昭和60年ころから平成13年ころ、13件の不完全燃焼事故が発生していたんですね。
 東京地裁は、代取と部長には平成17年の事故発生を予見すべき義務とこれを回避すべき義務があった、なのにこれを怠ったと判断したのです。
 過去、パロマは、「改造作業をしないように」という注意文書を出したり、説明会を開いたりしたようなのですが、それでは足りないとされています。
 事故の第一次的な責任主体(パロマであれば「不正改造」を行った人)だけでなく、上司やトップが、(民事上だけでなく)刑事上も責任追及される傾向は強くなっています。
 経営者に求められるものは、大きいですね。

 

弁護士 渡部 有紀

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□■□ 『中小企業のための経営支援情報』第32号 □■□
福岡☆リスク法務実務研究会
◇◆◇ 賃借人の家賃滞納の督促に関して(現在審議中の「賃借人居住安定化法」の要点について) ◇◆◇

○背景:  近年、いわゆる「ゼロゼロ物件」の入居者などに対する追い出し行為の被害が相次ぎ、鍵の交換、深夜に及ぶ督促など家賃等の悪質な取り立て行為が平成16年に比べ10倍以上に増加し、被害にあった入居者から提訴される事案も増えています。
 昨年12月には、追い出し屋によって事実上退去させられた被害者が訴えた訴訟について、姫路簡裁は、追い出し行為に直接か関わった不動産会社に加え、家主に対しても「社会的に許されない」として、家主の使用者責任を認定する判決が出されました。
 こうした動きを受けて提示された「賃借人居住安定法」は、賃貸住宅の家賃等の悪質な取り立て行為の発生等の家賃の支払いに関連する賃貸住宅の賃借人の居住をめぐる状況にかんがみ、賃貸住宅の賃借人の居住の安定の確保を図るため、
 1家賃債務保証業の登録制度の創設
 2家賃に係る債務の弁済の履歴に関する情報の収集および提供の事業を行う者の登録制度の創設
 3家賃等の悪質な取り立て行為の禁止等の措置を講ずるための法律案です。
(※尚、対象は個人に対する賃貸借契約のため事業用には適用されません)

○注意点:
 この法律案の注意点が上記、3です。
 家賃等の取立てをする対象者は、「家賃債務保証業者、賃貸管理業者、賃貸事業者(大家)、取立事業者」(同法61条)とされています。
 その内容は、「人を威迫(人に不安を感じさせること)し、又は人の私生活もしくは業務の平穏を害するような言動」を一般的に禁止します。
(面会、文書送付、貼り紙、電話、鍵の交換やドアロック、動産の持ち出し及び保管、深夜や早朝の督促、そしてこれらの行為を予告すること)違反すると、2年以下の懲役もしくは300万円の罰金に処せられます。
(同法72条)  しかし、どこからが威迫なのか?「今月の家賃がまだですよ。
早く入れて下さい。」と電話をかけ、同じような内容の書面を送ることは威迫?威迫の基準が、はっきりしない以上、賃借人が「威迫だった」と言えば認められる可能性が…。
(ちなみに意味合いとして「威迫」<「脅迫」であり、刑法222条「脅迫罪」は2年以下の懲役又は30万円以下の罰金…刑法の脅迫罪よりなぜ重い?)

○対策:  入居審査の厳格化や定期賃貸借契約の利用、家賃保証会社の利用、裁判手続きや法的専門家の活用(専門家がついていることで家賃滞納などのリスクを軽減する)などが挙げられます。

 もし、本業の他に不動産賃貸業や個人的にマンションを貸している方がいらっしゃれば、この法律が施行される前に何らかの対策を講じる必要があると思われます。
 この法律を盾に、理不尽な借主や反社会的な団体の賃借人の地位が上がることは許されることではありません。
 また、賃料から本業の補てんを行い、事業を維持されている方が不安定になることや、賃料をローン返済している大家さんが、滞納が増えてローンの返済が不能になって自己破産でもするようなことが起こってくることは絶対に避けなければなりません。
 現在、使用中の賃貸借契約書があれば、まずはそちらから見直しを始めることからされてみてはいかがでしょうか。
 原則、民法や借地借家法などは賃借人の保護を重視する傾向にありますから、当事者間での賃貸借契約書の条項や特約事項がこれからもっと大きな意味を持ってくることになります。

行政書士 和田 好史

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《執筆メンバー》  弁護士3、税理士2、社会保険労務士4、行政書士3、司法書士1、弁理士1、不動産鑑定士1、ファイナンシャルプランナー2、保険代理業1(計18名) ■発 行  福岡☆リスク法務実務研究会
■メール  risk@riskhoumu.com
■ブログ  http://blogs.yahoo.co.jp/hokenhoumu
■メルマガ http://www.mag2.com/m/0001120380.html
■HP    http://www.riskhoumu.com
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□■□ 『中小企業のための経営支援情報』第31号 □■□
福岡☆リスク法務実務研究会
◇◆◇ 扶養控除が変わります ◇◆◇

 

 ここしばらく変わりなく続いてきた所得税の扶養控除ですが、平成23年分より改正されます。
 これは民主党の政策「所得控除から税額控除・給付付き税額控除・手当へ」にのっとった措置です。
 ここ数年、目立ちつつある所得格差を是正させていくうえで、所得税が持つ所得再分配機能を高めようとする狙いがあります。

 一例を挙げますと、現行の制度ですと、中学生以下の子どもをお持ちの場合、一人当たり38万円の所得控除である扶養控除を受ける訳ですが、所得税の最高税率40%が適用される所謂高所得者の場合15万2千円の減税であるのに対し、所得税率5%の低所得者の場合1万9千円の減税にしかなりません。
 そこで、中学生以下には子ども手当(平成22年度の場合一人当たり一万三千円)を支給する代わりに、扶養控除は廃止、高校生に関しては、高校の授業料を実質無料化する代わりに、現行の扶養控除の上乗せ部分(特定扶養控除25万円)の廃止となります。
 扶養親族が大学生の場合、現行の扶養控除38万円プラス特定扶養控除25万円、大学生を超える年齢の扶養親族の場合、現行の扶養控除38万円に変更はありません。
 また、70歳以上の老人扶養控除48万円(同居老親加算10万円)にも変更はありません。

 高校生以下のお子様をお持ちの親御様、平成23年1月分の給料明細を見て、手取りが減ってるってビックリしないように心の準備をお願いします。

 それにしても、パッと見た感じでも今回の実質増税部分で出てくる財源と給付を比べた場合、明らかに給付が多い気がするんですが、 ほんとに大丈夫なんですかね〜。

 

税理士 服部 康太郎

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☆★☆ 書籍出版PR ☆★☆

 リスク法務実務研究会の関連研究会である労働判例研究会にて、昨年に引き続き、今年も次の通り書籍を出版しましたのでお知らせ致します。
 様々な解雇事由ごとに多数の労働判例を紹介してわかりやすくまとめています。
 チェックリストや相談事例(Q&A)も充実。
 ぜひ書店等でお買い求めいただきますようお願い致します。
 書籍名 『労働判例にみる解雇基準と実務』
 著 者 労働判例研究会(特定社会保険労務士安藤政明、弁護士堀繁造、弁護士西村潤、弁護士小川剛、他弁護士2名)
 出版社 株式会社日本法令
 定 価 税込2,310円
 発売日 平成22年11月12日

《執筆メンバー》  弁護士3、税理士2、社会保険労務士4、行政書士3、司法書士1、弁理士1、不動産鑑定士1、ファイナンシャルプランナー2、保険代理業1(計18名) ■発 行  福岡☆リスク法務実務研究会
■メール  risk@riskhoumu.com
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