地面師とは土地や建物の持ち主が知らないうちに本人になりすまして不動産を勝手に転売して代金をだまし取ったり、担保に入れて金を借りたりする詐欺グループのことです。
昨今、大手ハウスメーカーである積水ハウスが、東京・五反田駅近くの土地を購入のために63億円を支払ったにもかかわらず、土地の所有者側の提出書類に真正でないものが含まれていたことを理由に法務局に登記を却下され、その後売主と連絡が取れなくなっているという事件が、業界を揺るがせています。
地面師の手口は、所有者の知らない間に、本人確認用の印鑑証明証、パスポートなどが偽造し、それを利用した「成りすまし犯」が手付金や売買代金を受け取るなどの方法で行われます。
<所有権移転登記>
地面師がの成りすましをするには,下記の書類等が必要です。
@権利証
A真の所有者の実印及び印鑑証明書
<権利証>
権利証については,盗んでしまえばそれで完了しますし,最近ではコピー技術の発展により精巧に偽造されたものもあるようです。
もし,司法書士が詐欺だとは知らずに取引に関与したとしても盗まれたものであることは書面を見てもわかりませんし,偽造であったとしても権利証は印鑑証明書のような透かしに偽造防止技術が施されていることはないので,一見して明らかなものを除いて偽造を見抜くのはまず無理だと思います。
さらに,権利証ではなく登記識別情報だった場合は,パスワードさえわかれば良いため,盗品であることを見抜くことは不可能です(登記識別情報の偽造はあり得ません。パスワードが違えば登記が通らないため偽造しても無駄です。)。
<実印及び印鑑証明書>
次に,実印と印鑑証明書ですが,これは真の所有者が保管している実印と役所から発行される印鑑証明書が必要となります。
過去の取引などで印鑑証明書を持っていれば実印自体の偽造はできますが,印鑑証明書には3か月の有効期限がありますのでそう簡単に最新の印鑑証明書を手に入れることはできません。
今回の積水ハウスのケースで行われたのは,偽造のパスポートを使って本人になりすまして,印鑑登録からやり直したというものです。
いずれにしても,権利証を偽造するよりも実印と印鑑証明書を手に入れる方が難しいと思います。
・地面師にだまされた場合、誰が責任を負うのか?
もし,間に不動産業者や司法書士が入っている場合は損害賠償責任を問うことができる場合がありますが,実際問題として仲介の不動産業者も司法書士も,売主がどのように所有権を取得したのか詳細な説明を受けるケースは少ないですし,仮に説明を受けたとしても当然地面師などと正直に説明することはあり得ませんので見破ることは現実的には不可能です。とすると,過去には偽造を見抜けなかった不動産業者や司法書士に損害賠償責任を認めている事例もありますが,かなりの落ち度が無い限り全額の賠償責任を負わせるのは難しいと思います。
さらに,発覚したころには売主は逃げてますので,売主から回収することもできない可能性が高く,結果として泣き寝入りせざるを得ない可能性もあります。
回答者 司法書士 池田 龍太
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