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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《平成29年6月号》
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 弁理士の高松宏行です。 今回は特許を取得する際にきわめて重要となる「特許請求の範囲」について説明します。特許請求の範囲とは、特許出願を行った者(出願人)が独占排他的に実施したい発明の内容を示すもので、特許庁に提出する必須の書面です。 素晴らしい発明をしても、特許請求の範囲の記載がよくなければ審査官から不明瞭との指摘を受けてしまい、また、仮に特許を取得できても権利範囲が無駄に狭くなってしまいます。
 弁理士業界では有名なネタですが、鉛筆の発明に関する特許請求の範囲の考え方の一例をご紹介します。皆さまも一緒に考えてみてください。

鉛筆
(従来の鉛筆の課題)
 従来の鉛筆は横断面(鉛筆の長手方向と直交する方向に切断したときの面) が円形であったため転がりやすく、 テーブルから落下して芯が折れる等の課題があった。
(新たに創作した鉛筆)
 鉛筆の横断面を六角形にすることで、転がりにくくすることができた。
 上記の画に基づいて単純に考えるならば、特許請求の範囲は「横断面が六角形であることを特徴とする鉛筆」となります。しかしながらこの表現では、どうして六角形にすれば鉛筆が転がりにくくなるのか?という理由を考えたとき、権利範囲が狭くなりすぎていることに気が付きます。すなわち、横断面は三角形でも四角形でも「転がりにくくなる」という効果を得ることができるかもしれません。そうなると、「横断面が多角形である」という表現がしっくりきます。但し、この表現ではまだ権利範囲が狭いかもしれません。横断面を楕円にしても鉛筆は転がりにくくなるのでは?横断面の中心から外縁までの距離と関係があるのでは?すなわち、 転がりにくい真の理由は何か?
 その他にも、鉛筆の全長に亘って多角形又は楕円にする必要があるのか?シャープペンシルやボールペンにも適用できないか?といった疑問が湧いてきます。結論になりますが、特許請求の範囲の書き方に正解、不正解はありません。 従来技術も意識しなければなりません。 同じ発明であっても、 弁理士によって特許請求の範囲の書き方は当然ながら変わります。
 以上説明しましたように、 我々弁理士は様々な角度から発明を検討し、 出来るだけ広い特許請求の範囲の書き方は何なのか、 という難題と常に直面しながら仕事に励んでいます。

 今月は以上です。

回答者 弁理士 高松 宏行
高松特許事務所
弁理士 高松 宏行
〒810-0041 福岡県福岡市中央区大名2-4-30 西鉄赤坂ビル7F
電話092-711-1707 FAX 092-711-0946
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