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弁理士の高松宏行です。今月は知的財産と海外との関係についてお話しします。相談者から「日本で特許権や商標権などを取得すれば、海外でも権利を主張できるのか」といった質問を度々受けます。答えは「NO」です。特許、実用新案、意匠、商標は「属地主義」を採用しております。属地主義とは、例えばA国で特許権を取得したならば、特許権の効力はその国の領域内に限定されるといった立法主義をいいます。
したがいまして、海外で特許権などを取得したい場合は、希望する国に特許出願する必要があります。海外に特許や商標を出願する際の便利な制度として、「PCT出願」、「パリ優先権に基づく出願」、「マドリッド・プロトコル出願」等があります。これらの制度を利用することで、出願日の遡及や手続が簡素化される等の有益な効果を得ることができます(今回は詳しい説明を省略します)。
「国際特許」という言葉をニュース等でたまに見かけますが、「国際特許」というものは制度上存在しません。「PCT出願」を指すケースが多いと思われます。PCT出願とは、ひとつの出願願書を条約に従って提出することによって、全てのPCT加盟国(現時点で152ヶ国)に同時に出願したことと同じ効果を与える出願制度です。原則として国ごとに国内移行手続を所定の期間内に行わなければなりません。その後、国ごとに審査を受けますので、必ずしも特許を取得できるわけではありません。国ごとの弁理士に手続を依頼し、国ごとに法定印紙代が発生しますので、費用は高額になります(相場的には1ヶ国につき100万円以上と言われています)。中小企業の場合は、ジェトロ等が提供する外国出願助成金制度を利用することで出願時費用を1/2に抑えることも可能です。是非ご活用ください。
日本国内で特許を取得できたからといって、必ずしも全ての国で特許が取得できるとは限りません。国ごとに審査基準が異なり、また、手続補正(主に特許請求の範囲を書き換える手続)の要件等が異なるためです。この点については商標も同様です。有名な話ですが、清涼飲料水として国内で著名な「カルピス」は、英訳すると卑猥な言葉になるため、アメリカで商標登録が認められておりません。そのため、アメリカでは「カルピコ」という名称で清涼飲料水が販売されています。 このように、特許権や商標権を取得できるか否かの判断基準などは国ごとに異なりますが、海外における事業戦略を検討するうえで知的財産権はきわめて重要です。以前に述べましたが、知的財産権は国内外に存在する競業他社との差別化を図るうえできわめて重要です。来年度以後も、より多くの方々に知的財産権を活用して頂きたいと切望しております。 今月は以上です。 回答者 弁理士 高松 宏行
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