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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《平成30年6月号》
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 弁理士の高松宏行です。今回は特許を取得するための費用について説明します。特許を取得するための費用は主として、「法定印紙代」と「弁理士費用」で構成されます。「法定印紙代」は「特許出願時」、「特許出願中(出願審査請求時)」、「設定登録時」に発生します。「弁理士費用」は「特許出願時」、「特許出願中(拒絶理由対応時)」、「登録査定時」に発生します。以下に説明する法定印紙代は現時点を基準としており、来年度以降に変動する可能性があることを予めご了承ください。
 法定印紙代とは特許庁に支払う費用で、出願時には印紙代として一律14,000円を納付する必要があります。次に、単に特許出願しただけでは特許を取得できず、出願日から3年以内に出願審査請求をしなければなりません。この出願審査請求に要する印紙代が高額で、最低でも122,000円を納付する必要があります。次に、出願審査請求を行った後、特許査定がなされたならば、設定登録料を納付しなければなりません。初回は3年分を納付しますが、最低でも6,900円(3年分)かかります。
 特許取得にかかる最低限の費用は以上になり、総額で142,900円になります。
 これに加え、例えば請求項の数(分かり易く言うと発明の数)が増えれば出願審査請求料、設定登録料が増加します。また、特許を取得できないとの拒絶査定を受け、これに承服できないときは拒絶査定不服審判を請求できますが、最低でも法定印紙代が55,000円かかります。
 次に、弁理士費用について説明します。特許出願時に生じる弁理士費用は主として、特許請求の範囲、明細書、要約書、図面の作成手数料、出願手数料、電子化手数料を含みます。弁理士費用の内訳は特許事務所ごとに異なり、立案する請求項の数、明細書のページ数、図面の枚数等に基づいて決定するケース(従量制)と、請求項の数や明細書のページ数などを考慮せず一律に決定するケース(定量制)に分けられます。勿論、依頼を受ける発明の難易度によって費用は大きく異なります。
 このように、出願時に発生する弁理士費用は様々な要素によって大きく変動します。参考としてですが、難易度が低い発明(構成がきわめて簡易な発明)の場合、出願時の弁理士費用が20万円前後になる可能性があるかもしれません。他方で、難易度が高い発明(構成がきわめて複雑な発明)の場合、出願時の弁理士費用が30万円以上になる可能性も十分にあります。
 次に、出願中(拒絶理由対応時)に発生する弁理士費用についてです。出願審査請求を行うと、特許庁の審査官が特許出願に係る発明を審査します。審査官が特許は認められないとの心証を得た場合、拒絶理由が通知されます。特許出願人は、拒絶理由通知に対して意見書や手続補正書を提出することができ、これにより権利化を図ることができます。意見書や手続補正書の作成は高度な専門性を要するため、基本的に弁理士が行います。拒絶理由の内容や難易度によって、弁理士費用に一定の差がありますが、相場的には意見書と手続補正書のぞれぞれで4〜6万円が多いと思います。
 最後に、登録査定時の弁理士費用は、成功謝金と設定登録料の納付手数料が主な内訳となります。成功謝金の計算方法は特許事務所ごとに異なりますが、相場的には請求項の数が1のケースで10万円以上が多いです。納付手数料は相場的に1万円以上が多です。以上をまとめますと、特許を取得するために必要な弁理士費用は難易度等によりますが、少なくとも40万円以上をお考えになられた方がよいです(拒絶査定不服審判については考慮しておりません)。
 その他、特許庁は法定印紙代の減免制度を設けていますが、これについては次回以降にご説明したいと思います。

 今月は以上です。

回答者 弁理士 高松 宏行
高松特許事務所
弁理士 高松 宏行
〒810-0041 福岡県福岡市中央区大名2-4-30 西鉄赤坂ビル7F
電話092-711-1707 FAX 092-711-0946
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