おもしろ知財ツアー

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《平成31年2月号》
おもしろ知財ツアー26

 弁理士の高松宏行です。
 今回は商標権について、「iphone」を事例にして説明します。「iphone」は今日現在で、米国企業のアップル インコーポレイテッド(Apple Inc.)が開発し、全世界で販売する携帯電話としてきわめて著名です。初代モデルは10年以上前の2007年1月に発売されました。
 「iphone」について、アップル インコーポレイテッド(以下「アップル社」と称します)が日本で保有している商標権は次のとおりです。

 登録第5147917号
 商  標:iphone
 指定商品:(第28類)おもちゃの携帯電話,おもちゃ電話
 出願日 :2006年9月19日

 このように、アップル社は第9類に属する携帯電話について、「iphone」の登録商標を保有していません。なお、アップル社は「iphone」に関する商標権を他にも取得していますが、指定商品中に携帯電話は含まれていません。
 理由は簡単です。アイホン株式会社(以下「アイホン社」と称します)が電話機等を指定商品として「iphone」と類似する登録商標「アイホン」を既に保有していたためです。詳細は次のとおりです。

 登録第460472号
 商  標:アイホン
 指定商品:(第9類)電信機,電話機
 出願日 :1954年4月9日
 ※電話機と携帯電話は類似します

 このように、アップル社はアイホン社の許可がなければ、正当な権利下で携帯電話「ipone」を日本国内で販売することができません。アイホン社は初代iphoneが日本で販売される前年の2006年に「iphone」を出願し、その後登録に至っております。アップル社は日本での販売開始前に「iphone」に類似する登録商標が日本に存在していることを把握し、アイホン社とのライセンス交渉を行っていたものと思われます。アイホン社のホームページには、アップル社との間で「iphone」に関する使用許諾ついて合意に至ったことを証明する書面が開示されています。
 このように、アップル社はアイホン社の使用許諾により、日本国内で携帯電話「iphone」の販売を行うことができています。もし仮に、アイホン社がアップル社に使用許諾を与えていなかった場合、アップル社は日本で「iphone」を販売できていなかったかもしれません。
 商標権に基づく使用許諾契約は一般的に、ライセンシー(許諾を受ける側)がライセンサー(許諾する側)に所定のライセンス料を支払うことで成立します(アイホン社とアップル社との間における契約内容の詳細は公表されていません)。

 この「iphone」についての事例から、商標権を取得するということがいかに大事であるかをご理解頂けると幸甚です。

 (豆知識)
 商標法第4条1項11号は、商標登録を受けることができない商標として、「商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であって、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」を規定しています。
 簡潔に述べますと、商標が同一又は類似し、且つ、指定商品・役務が同一又は類似しないと4条1項11号は適用されません。
 アップル社が保有する登録商標「iphone」の指定商品は「おもちゃの携帯電話」ですが、これはあくまで「おもちゃ」であり、「携帯電話」と「おもちゃ」は類似しません。
 このような理由で、アップル社は「おもちゃの携帯電話」を指定商品として「iphone」の登録商標を保有できております。

 今月は以上です。

回答者 弁理士 高松 宏行
高松特許事務所
弁理士 高松 宏行
〒810-0041 福岡県福岡市中央区大名2-4-30 西鉄赤坂ビル7F
電話092-711-1707 FAX 092-711-0946
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