弁理士の高松宏行です。本年も何卒宜しくお願い致します。
今回は大人気漫画「鬼滅の刃」と知的財産について説明します。
特許情報データベース上で「鬼滅の刃」をキーワードにして商標検索を行うと、いくつかの登録商標がヒットします。検索結果画面を下記に貼付します。
この検索結果からは、集英社が「鬼滅の刃」を第3類、9類、16類、25類、41類などの様々な商品役務分野で商標権を取得していることが分かります。
なぜ商標権が1つではないかというと、商標見本から判りますように、商標の態様が異なっています。NO1.3.4は同じですが、指定した区分が異なります。つまり、上記6つの商標権は、保護される権利範囲が異なります。
過去にも説明しましたが、商標権者は指定する商品・役務の範囲で、ネーミングやロゴを独占排他的に使用できます。例えば、集英者は第3類で「化粧品」を指定しておりますが、第三者が「鬼滅の刃」というネーミングを付したファンデーション(化粧品の下位概念)を販売すると、集英社が保有する商標権を侵害することになります。
仮に集英社が「お茶」を指定して商標権を取得しておらず、第三者が「鬼滅の刃」という「お茶」を販売した場合、集英社は商標権を行使することができるでしょうか。答えは×(行使できない)です。しかしながら、集英社は第三者に対して何もできないわけではなく、不正競争防止法という法律に基づいて、第三者に対して使用の差し止め等を求めることができます。不正競争防止法はその名のとおり、不正な競争を防止する目的で設けられたものですが、商品等表示(ここでは鬼滅の刃)が周知・著名であることが必要になります。鬼滅の刃はほぼ間違いなく周知・著名であると考えます。
その一方で、集英社とは関係のない第三者が「お茶」を指定して「鬼滅の刃」を商標登録出願した場合、どうなるでしょうか。この場合、第三者の出願した商標に対しては、「出所混同を生じるおそれがある」、「公序良俗に反するおそれがある」、「不正目的で使用されるおそれがある」等を理由とした拒絶理由が通知され、商標権を取得できないと思われます。
日本の商標法は非常によくできた法律です。
今月は以上です。
回答者 弁理士 高松 宏行
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