弁理士の高松宏行です。今回は有名なお笑い芸人が発明した特許をご紹介します。
まずは下記画像をご覧ください。
人の顔が破線になっていますが、衣服の裏地に人の顔がプリントされていることを示しております。
これは衣服を手でめくりながら持ち上げると、衣服を着用した人の顔の前にプリントされた人の顔が位置する、というアイデアです。テレビで多く披露された芸なので、ご存じの方も多いと思います。
意外と思われるかもしれませんが、このアイデアは特許になっており(特許第6249501号)、第三者が勝手に製造・販売すると特許侵害が成立します。
このアイデアを特許的に表現すると、次のようになります。
「プルオーバー型の上衣を着用する使用者によって、前記使用者の左右の腋が露出し、前記上衣の前身頃と後身頃がそれぞれ裏返えるように裾部が引き上げられ、前記使用者の頭部の前方に、像が、前記使用者から見た正立状態で現れた後、前記使用者が両手で前記裾部を引き上げた状態を維持することで前記像が前記使用者の頭部の前方にとどまるように、前記上衣の前記前身頃の裏地のうち左右の袖ぐりの下端同士を結ぶラインを跨ぐ位置に、人物、動物及びキャラクターのうちのいずれかの顔をかたどった前記像が前記上衣の上下方向に対して倒立状態で設けられることを特徴とする小道具。」
上記の文章は、特許請求の範囲(請求項1)に記載されたものです。
いかがでしょうか?口では簡単に説明できても、特許として権利を成立させるためには非常に複雑で難しい表現になります。主に「発明の明確化」、「公知技術との差異の明確化」、「権利範囲をできる限り広くする」ことを考慮すると、このような難しい表現になります。
特許のポイントを分かりやすく説明すると、袖ぐりの下端(上画像の14G)同士を結ぶ線上に、顔のプリントが衣服の裏地に上下反転で施されている点です。
特許請求の範囲では、顔ではなく「像」と表現しています。これは、人の顔以外がプリントされても権利範囲に含まれるようにするためです。
また、発明の名称が「衣服」ではなく「小道具」と表現されている点も意味深いです。
最後に、特許公報に開示されている使用例をご紹介します。
今月は以上です。
回答者 弁理士 高松 宏行
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