弁理士の高松宏行です。新型コロナの影響により、楽天市場などの巨大プラットフォーム上にネットショップを開設してビジネスを展開する業者が増加しております。今回はネットショップを展開する際の注意点について、事例を挙げてご説明します。
【事例】日本の会社であるX社は先月より、海外の業者からテーブルを輸入し、ネットショップを利用して日本国内での販売を開始した。
1.商品の詳細
テーブルの商品名は「ドリーム」である。
テーブルは4本の脚が独特の形状を有している。
テーブルは、本体と脚を特殊な構造で折り畳むことでコンパクトに持ち運びできるという特徴を有する。
2.その他
海外の業者はライバルである日本の業者Y社にもテーブルを卸している。
Y社は形状・構造が全く同じテーブルを日本国内で販売している。
商品名も「ドリーム」である。
上述のような事例はかなり多く、十分に想定されるケースです。
知的財産の観点から特に気を付けるべき法域は、特許、意匠、商標、著作権、不正競争防止法です。個別に解説します。
・特許
「本体と脚を特殊な構造で折り畳むことでコンパクトに持ち運びできる」という特徴は、特許の対象になり得ます。特許に関する情報が集約されたデータベース(サイト名は「特許情報プラットフォーム」)から、特許を調べる必要があります。
事例のケースでは、Y社がテーブルを設計し、海外の業者で製造させているケースがあります。このような場合、Y社が特許を保有している可能性があり、X社が勝手に販売すると特許侵害になります。特許情報プラットフォームでは、Y社をキーワードにしてY社が保有する特許を調べることが可能です。
海外の業者が日本で特許を保有している場合、同じ海外の業者からテーブルを買い付けることで特許は消尽したものと考えられ、特許侵害にはなりません(例外はありますが、細かい点なので今回は説明を省略します)。
・意匠
特許と同様、Y社が日本で意匠権を保有している可能性があります。特許情報プラットフォームでは意匠権も検索可能です。
テーブルのデザインは海外の業者が考えたが、日本での権利は日本国内の業者(代理店など)で取得することもあります。
・商標
「ドリーム」が家具の分野で商標登録されていないかを、特許情報プラットフォームで調べる必要があります。
仮に商標登録されていない場合、X社は商標登録出願して商標登録を図るべきです。
商標は特許や意匠と異なり、新規性および進歩性(創作非容易性)の要件を満たす必要がありません。
特許情報プラットフォームでの商標検索においても、Y社をキーワードにして調べることが可能です。
・著作権
商品を広告する際、他のネットショップ上で使われている商品画像を使い、さらには商品説明文や配列なども模倣するケースがあります。
特に同一の商品を複数の業者が販売するような状況下では珍しくありません。
このような行為は著作権法上、違法になる可能性がきわめて高いです。
・不正競争防止法
形態模倣(2条1項3号)に該当しないか確認する必要があります。テーブルが国内販売日から3年を経過していないか、Y社の社員がそのテーブルをデザインしたものであり、X社がそれを模倣していないかを確認したほうがよいです。
その他、今回は説明を省略しますが、2条1項1号(周知表示混同惹起行為)、2条1項2号(著名表示冒用行為)にも該当しないか確認したほうがよいです。
このように、商品を海外から輸入して販売する行為においては、知的財産の観点から気を付けるべき事項が多岐に渡ります。
特に今回ご紹介した事例では、Y社をキーワードにして権利関係を調べるだけでもリスクをある程度解消することができます。
トラブルを未然に解消するためにも、お近くの弁理士に是非ご相談ください。
今月は以上です。
回答者 弁理士 高松 宏行
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