おもしろ知財ツアー

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和4年8月号》
おもしろ知財ツアー68

弁理士の高松宏行です。耳にすることが多いニュースの一つに、「偽物のブランド(※)を販売した者が商標法違反により逮捕されました」といったものがあります。
(※)シャネル、ルイ・ヴィトン、グッチといったハイブランドが多い
今回はこの点について詳しく解説したいと思います。
商標権を侵害する行為を行うと、商標法違反となります(罰則がありますので十分にお気をつけください)。
商標法第25条には、「商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する」とあります。つまり、登録商標を使用できるのは正当な権原を有する者(商標権者やライセンスを受けた者)であって、無権利者が登録商標を使用すると侵害に該当することが第25条より読み取れます。
なお、商標の使用とは、例えば、商品の包装紙に登録商標を表示することや、登録商標を付した商品を販売する行為が該当します。
偽物被害の多いハイブランドのひとつにシャネルがありますが、ブランドのオーナーである「シャネル エス アー エール エル」は日本で沢山の商品、役務を指定して「シャネル/CHANEL」を商標登録しています。口紅、かばん、洋服などが代表的なものですが、他にもお菓子やお茶といった現実には見かけない商品も権利化しています。
例えば、全く関係のない菓子メーカーが無断で「シャネル」という名称のチョコレート菓子を製造・販売しても、シャネル社が保有する商標権の侵害となります。
私の調べた限りでは、シャネル社は例えば、トウモロコシを指定商品として「シャネル」を商標登録していないようです。したがって、シャネル社と全く関係のない食品メーカーが「シャネル」という名称のトウモロコシを販売しても、商標権侵害にはなりません。
では、シャネル社はこの食品メーカーに対して何もできないのでしょうか?
答えは「No」です。
シャネル社は、不正競争防止法に基づく使用の差止請求などを請求することが可能です。
不正競争防止法第2条第1項第2号には、不正競争に該当する例として、「自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、・・・(途中省略)・・電気通信回線を通じて提供する行為」を掲げています。
シャネルは商品等表示に該当しますが、シャネルは日本で明らかに著名です。シャネルはコスメやかばんが有名ですが、シャネルが仮にトウモロコシを生産、販売していない場合であっても、不正競争防止法第2条第1項第2号の規定に基づく使用差止めが可能です。
簡単なことではないですが、自己の使用する商標が有名になればなる程、法律的に保護される範囲が広がります。
自社ブランドを商標登録していない方は、お近くの弁理士に是非ご相談ください。

 今月は以上です。

回答者 弁理士 高松 宏行
高松特許事務所
弁理士 高松 宏行
〒810-0041 福岡県福岡市中央区大名2-4-30 西鉄赤坂ビル7F
電話092-711-1707 FAX 092-711-0946
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