弁理士の高松宏行です。つい最近ですが、ChatGPTに「ジブリ風の画を描いて」と指示したら、実際にそのような画を作成し、それが著作権法上の問題にならないか、というニュースで話題になりました。
生成AIと著作権はこれからの課題であり、判例の蓄積も足りない状況ですが、現時点での個人的な意見としてお話させて頂きます。
著作権を簡単に説明すると、著作者がその著作物について、コピー、翻訳、翻案、インターネット上にアップロードする等といった行為を独占的に行うことができる権利をいいます。ここで、著作物とは、思想や感情を創作的に表現したものと法律上定義されています。これは私の解釈ですが、「思想や感情を創作的に表現したもの」は具体特定的である必要があります。
ジブリを例に挙げると、映画「となりのトトロ」のトトロをそっくりそのまま模写(手書きも含む)して、それを自身のSNSなどに公開すると、著作権侵害が成立します。ただし、公開した者がトトロという具体的なキャラクターを知っていることが前提になります(依拠)。トトロはとても有名なキャラクターなので、知らずに同じキャラクターを描くことは考え難いです。
では、ジブリ作品に登場しないキャラクターをジブリ風に描いた場合はどうかというと、描かれたキャラクターがジブリ作品に登場するキャラクターとそれなりに違う場合は、著作権法上の問題は起きないものと考えられます。
文部科学省がこの件についてタイムリーに次のようなコメントを出しております。
「著作権法は、創作的な表現に至らないいわゆる作風やアイデアというものを保護するものではないことから、単に、アイデアが類似しているのみであれば、著作権侵害には当たらない。」
ここで、私なりに考えた「ジブリ風」を言語化すると、
・人の顔が素朴
・線の太さが細い
・色彩が水彩風で、グラデーションが自然(コントラストがはっきりしていない)
・陰影が淡い
・情緒的で風情のある表現
です。
このような要素に基づいて作成したイラストは、そのイラストがジブリ作品に登場する具体特定的な人やモノに似ていない限り、著作権侵害にはならないということになりそうです。
ちなみに、ChatGPTにプロンプトを指定して生成された画像の著作権は、プロンプトを指定した者に帰属しないという考えが主流です。どれだけ細かく指定したかということも検討すべきですが、基本的にはAI側が考えて作成したものであり、人間が思想や感情を創作的に表現したとまでは言えないと考えられるためです。
今月は以上です。
回答者 弁理士 高松 宏行
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