【初めに】
皆様、こんにちは。行政書士の和田でございます。前回から「成年後見制度」についてお話をさせてえいただいております。今回は、成年後見制度における、後見人側の問題についてふれていきます。
【1.制度の中で、ご本人ではなくサポートする側(後見人等)の問題が増加】
・高齢者同士の夫婦の世帯や身寄りのない独居の高齢者の増加にともない、そもそも後見人となるべき親族(身近な人)が見当たらない、もしくは、親族がいたとしても遠方に居住しているまたはかなり疎遠というケースが増加しています。
・この問題に対しては、専門職(弁護士、司法書士、行政書士等)が後見人になったり、地域の行政関係者(民生委員さんや地域包括センター等)が出来る限りのサポートをしている状況です。ご本人も、何年に一度しか会えない親族より、比較的、すぐ会える身近な人を頼りにしています。
・これからは、より意欲をもって身近に感じられる「市民後見人」の利用などが求められると思われます。市民後見人とは、その名前のとおり、一般の方が、他人のために「後見人」として活動する人のことをいいます。今はまだ特定の地域でしか市民後見人は活躍しておりませんが、地域貢献やボランティア活動に熱心な方が、特定の研修等を受け、しっかりと能力を担保して専門職、地域、行政等のサポートがある状態を作りだせば、市民後見人が活躍できると思いますし、サポートする側の人手不足を解消できるかもしれません。
・いざ後見人を引き受けるとなると、手続きからその後の後見人の職務に関する様々なことが重荷に感じてしまうという問題があります。
・この問題に対しては、手続きの煩雑さという意味では一人で行うのではなく相談相手(例えば、友人や地域の方、専門職等)を見つけた上で一緒になって一つ一つクリアしていくということで対処していくのがいいかと思います。手続きする上で、一旦、申請者が費用を負担するなどの問題もあり、中々、すぐにそのあたりの問題が変わるものではありませんが、一人で悩むよりは、力になってくれる人をまずは確保しておきましょう。後見制度を利用してからも、それは同じことで、一人の方を「チーム」として支えていくような体制を作っておくようにして下さい。サポートする側が悩んで、先に潰れては意味がありません。(いわゆる介護疲れや後見疲れを減らす環境作りを先に行う)
【2.現状の成年後見制度を利用しない理由】
では、現状、多くの人が成年後見制度を利用しない理由で多いものは、何となく今のままでもご本人をサポート出来るからです。財産を管理するのも、カードで暗証番号さえ知っていればお金の出し入れも出来ますし、支払い等も引き落としなど自動で行うものを中心にすれば問題はないと感じている方が多いというのがあります。
介護や見守りをするのも、特に不自由はないから…と。しかし、皆さんが全員、そういう恵まれた環境(子供や親族が同居あるいは近くにいて誠実に色々とお世話をしてくれる)にはないはずですし、良くない例としては、実際に、サポートしている人がいない時にご本人が悪徳商法に遭われたり、ご本人の財産を親族が搾取したり、ご本人に対しての暴力や虐待、介護疲れによる無理心中などいう事例も出てきています。
そういうことをなくすためにも「成年後見制度(法定後見・任意後見)」を利用して、サポートする人が公的にも法的にも認められ、ご本人のために後見人が動きやすくする方を選択するのがいいと思います。周りの人に後見制度を利用していると分かってもらうことで、いい意味で「甘える」ということをもっと日本人はしていっていいのではないかと思います。
次回は、成年後見制度を利用する前に、把握しておかなければならないことをお話していきます。
回答者 行政書士 和田 好史
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