【初めに】
皆様、こんにちは。行政書士の和田でございます。ここ何回かは「成年後見制度」についてお話をさせていただいております。今回は、成年後見制度の少し細かい点というところをお話致します。
【1.成年被後見人の選挙権行使について】
平成25年6月30日に施行されていますが、公職選挙法第11条1項1号が改正されまして、約14万人の成年被後見人の選挙権が回復しました。
サポートする側の後見人が注意すべき点としては「中立的立場の堅持」と「投票行為の支援」ということが挙げられます。
具体的には、後見人が特定の政党又は候補者への投票の勧誘、成年被後見人に対して選挙に関するいかなる意見や感想を表明してはならないということが中立的立場の堅持ということです。また、必要に応じ成年被後見人に対し投票できることを告げ、投票の意思を有する成年被後見人に対しては、投票所への交通手段の確保又は付き添う人の手配に加え、期日前投票、不在者投票、施設における不在者投票、代理投票などの制度を出来る限り活用して、投票出来るように努めることが投票行為の支援ということです。
選挙権の行使は、国民の基本的人権の行使でもあるので原則的には、投票したいと考えている成年被後見人の投票行為を可能な限り支援することが、サポートする側に求められます。
【2.少し特殊な「後見制度支援信託」】
後見制度支援信託とは、ご本人の財産のうち,日常的な支払をするのに必要十分な金銭を預貯金等として親族後見人が管理し、通常使用しない金銭を信託銀行等に信託する仕組みのことです。
後見制度支援信託を利用する場合は、ご本人の財産を信託するまでは原則として弁護士、司法書士、行政書士等の専門職が後見人として関与し、信託契約締結後は、親族の方が単独で後見人を担当することになります。信託契約では、いくらを信託財産とするか、収支が赤字の場合等、信託財産の中から定期的に交付する金額が必要かどうか、必要な場合はその額等が決められます。信託契約締結後、信託財産の中からお金を引き出す必要が生じたり、定期的に交付される金額を変更する必要がある場合は、家庭裁判所の発行する指示書がなければ払戻を受けることはできません。また、収支が黒字の場合で,追加して信託できるほど預貯金が貯まった場合も、やはり指示書の発行を受けて信託財産の追加を行うことになります。これらの指示書の発行を受ける手続については、後見制度支援信託を利用することとなった場合に、家庭裁判所から説明書を送られてくることになっています。
後見人は、ご本人の財産について管理・処分する権限を持ちますが、この権限はご本人の利益のためにのみ行使できるもので、後見人の利益のために行使することはできません。残念ながら、現状では、後見人就任前にはご本人の財産を適切に利用・管理すると約束しながら、就任後に自己や他の親族の利益のためにご本人の財産を使用するといった不正行為に及ぶ親族後見人が少なからず見受けられます。そこで、最近、家庭裁判所では、このような不正行為を防止するための措置の1つとして、後見制度支援信託を利用することを勧めています。
今回は、少し細かい点についてお話させていただきましたが、成年被後見人の「意思」を大事にした選挙権については成年後見制度の根幹の「自分らしく生きる」というという観点からは大事なことでありますし、ご本人の財産の取扱いに関してのトラブルをなくすための「後見制度支援信託」は、親族間で、財産について後々もめることのリスクを減らす意味合いもありますので、知っておいて損はないかと思います。
回答者 行政書士 和田 好史
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