【年収の考え方】
税法上の被扶養者の範囲は、原則として「103万円未満」です。
そして、社会保険の場合は、「130万円未満(満60歳以上の被扶養者は180万円未満)」です。
しかし、この両者には、単純に数字に表れない、考え方の違いがあります。
1.所得税法上の被扶養者
毎年1月1日〜12月31日の1年間の「結果」で、被扶養者かどうかを判断します。
従って、ずっと無収入の方が、11月と12月だけ月額50万円の給与所得を得ても、年収100万円なので、被扶養者の範囲となります(通勤手当等で所得税法上非課税となる範囲の金額は、除外して計算します)。
ちなみに、「103万円」とは、基礎控除38万円と給与所得控除最低額65万円の合計金額です。
従って、自営業等事業所得の場合は、給与所得ではありませんので、38万円以上になれば、被扶養者から外れます。
2.社会保険法上の被扶養者
今後1年間の見込みで130万円未満であれば、被扶養者となります。
従って、1月から10月まで無職で、11月から月額15万円で就職した場合は、その年の所得は130万円未満ですが、今後1年で130万円以上の所得が見込まれるため、被扶養者から外れます。
逆に、1月から10月まで月額15万円の所得があった場合は既にその年に150万円の収入がありますが、11月に退職すればそれから1年間の収入が見込まれない場合は、被扶養者となります(失業等給付の受給があれば、給付額も収入として計算ます。)
所得税法と異なり、通勤手当等もすべて収入として計上します。
たとえば、月額8万円の給与の他、通勤手当3万円が支給されている場合、所得税法上は8万円×12カ月=96万円で被扶養者の範囲内となりますが、社会保険法上は11万円×12=131万円で被扶養者の範囲から外れます。
【被扶養者の範囲】
社会保険の被扶養者の範囲について確認します。
まず、大前提が、@本人の収入の半分未満の収入であること、A3親等以内の親族であること、の2点です。
@たとえば、本人の収入が15万円で、配偶者がパートで8万円の収入があれば、本人の半分以上の収入に該当し、被扶養者になれません。
A3親等以内であっても、原則として同居している必要があります。
別居で仕送り等によって被扶養者と認められる範囲は、次の通りです。
《配偶者、父母、祖父母、曾祖父母、子、孫、弟妹》※すべて本人との関係別居の場合は、対象家族の年収よりも高額の仕送りをしていることが条件となります。
たとえば、別居の年金受給の両親を被扶養者にする場合は、両親の年金額より高額の仕送りをしていることが条件となります。
上記以外、近いところでは本人の兄姉、配偶者の父母や兄弟姉妹等は、同居が要件となります。
仮に高額の仕送りをしていても、社会保険の被扶養者にはなりません。
ちなみに、配偶者に限り、社会保険の被扶養者になることで、同時に国民年金の3号被保険者となる特典があります。
女性の社会進出を阻み、負担の公平性にも大いに問題のある制度です。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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