【あっせんとは?】
あっせんとは、個別労働紛争に関して、あっせん委員が当事者双方の主張を聞いて妥協点がないか探り、あっせん委員が示す和解案に双方が合意すれば解決する個別労働紛争解決機関による紛争解決手段です。
あっせんは、迅速な紛争解決を目指す裁判外司法サービスです。
福岡では、個別労働紛争解決専門のあっせん機関として、福岡労働局と福岡県社会保険労務士会にあっせんセンターが設置されています(小職は、「社労士会労働紛争解決センター福岡」の副所長を務めております)。
【あっせんの特徴】
あっせんは、裁判ではありませんので、判決が下される場ではありません。
あっせん制度の主な特徴は、次の通りです。
@費用がほとんどかからない
A代理人として、弁護士又は特定社会保険労務士に委任しても良い
Bあっせん申立に対し、被申立人はあっせんに参加する義務がない
Cあっせん委員は、判決を下すのではなく、あっせん和解案を提示するのみである
D双方の主張をぶつけ合う場ではなく、双方の妥協点を探る場である
Eあっせん委員は、中立的な立場で、双方の妥協点を見つける努力をする
F各当事者は個別にあっせん委員と話をし、当事者が顔を合わせることはない
G原則1回の開催で、迅速な解決を目指す場である
H双方の合意が得られなかった場合は、あっせん不調で打ちきりとなる
I双方の合意が得られたときは、和解契約書が作成される
J裁判上の和解ではないので、そのまま強制執行はできない
【会社の対応について】
ご質問いただいた、あっせん制度については以上の通りです。
申立を受けても、参加する義務はありませんし、不参加に対するペナルティもありません。
では、どう対応したらよいでしょうか。
私見は、あっせんを求める内容があまりにも不当な内容でない限り、あっせんには応じた方が良いと考えます。
その主な理由は、次の通りです。
@あっせんに参加しても、相手方の主張を受け入れる義務はないし、妥協できる範囲を超えるあっせん案も拒否できる
A会社側の妥協できる範囲内であっせん成立し、問題解決できる可能性がある
B不参加だと、多くの場合そのまま労働審判等に持ち込まれる可能性が高く、審判を受ける前に和解した方が現実的に有利な場合が多い
以上の通り、あっせん申立を受けても参加する義務はありませんが、参加するデメリットもありません。
従って、「参加してみて、妥協可能な範囲であれば合意解決する/妥協できなければ、合意せず終了する」という考え方が、最も得策であると考えます。
もちろん、申立の内容によっては、その後の労働審判等も意識して、多少妥協範囲を超えても実害を最小限に抑えるため合意を目指す、という考え方も有効でしょう。
いずれにしても、申立を受けたら、まずは個別具体的な内容について特定社会保険労務士又は弁護士に相談されることをおすすめ致します。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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