【適年とは?】
適年とは、「税制適格退職年金制度」の略称です。
民間保険会社と年金契約を締結するのですが、従業員が受取人であることその他の要件を満たすことで「税制適格」として税務上のメリットがある制度です。
バブル期前からかなり普及していた制度です。 普及した理由は、税制上のメリットです。
掛金は企業が負担し、全額が損金計上されます。
そして、受取人である従業員については実際に受け取るまでは課税が繰り延べられます。
つまり、非課税で積立が可能で、受け取る際には退職所得として税法上優遇されるのです。
【適年の廃止】
この適年は、平成14年に将来廃止することが決定しました。
その猶予期間として廃止は10年後とされたのですが、その10年後にあたるのが、平成24年3月です。
ずっと先の話だと思っていましたが、ついにあと1年半くらいになりました。
廃止になるまで適年から脱退しなかった場合は、@税制上のメリットを受けられず継続するか(毎月掛金は給与課税等かなり不利益)、又はA積立原資を在職従業員に分配する(企業にとっては、今後支払うべき退職金原資が途中で消えてしまい、受け取る従業員にとっては、一時所得として課税対象)、のいずれかとなってしまいます。
【どうしたらよいか】
結論は、脱退するしかありません。
しかし、ただ脱退するだけでは、既述の通り積み立てられた原資は従業員に分配されてしまいます。
そこで、適年制度の受け皿として、
@中小企業退職金制度(中退金)、
A確定拠出型年金制度(DC)、
B確定給付型年金(DB)、
に原資を移行することが認められています。
以上の通り、単に脱退するか、又は@ABのいずれかに移行するしかありません。
@ABには、それぞれメリット・デメリットがあります。
Aは積立不足リスクから解放されますが、自己責任原則や60歳まで受給できない問題があり、
Bは従来の適年に最も近い制度と思われますが、企業の負担増が必至です。
具体的にどの選択がよいかは、現時点での積立額の状況や、今後の退職金に関する方向性によって大きく異なってきますので、個別に専門家に相談するべきでしょう。
【退職金規程】
最初に説明すべきだったかもしれませんが、適年は、退職金規程で定めた退職金を確実に積み立てるための方法の一つにすぎません。
適年を廃止前にどうしようかということよりも、退職金規程を確認し、@規程を実現するために今後の運用方法をどうしようか、又はA退職金規程をより現実的な内容に改定できないだろうか、という課題への方針を決めて初めて検討すべき問題といえます。
適年に加入している企業は、少なくとも10年前後以上の社歴があります。
そして、10年前後以上の退職金規程の歴史を有します。
この退職金規程で定める退職金額を支払うために、運用利回りが高いと思われる適年制度で積立をしてきたのですが、結果はご存じの通りで、企業は「積立不足問題」を抱えてしまうことに至ったわけです。
この機会に退職金規程を見直すことが、実は最も重要な事項なのです。
しかし、退職金という重要な労働条件の不利益変更は、簡単に認められるものではありません。
そのため、平成24年3月までにスムーズに移行できるように、一刻も早くこの問題に着手する必要があるのです。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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