【最低賃金とは?】
最低賃金とは、事業所が労働者に対して保障しなければならない賃金の最低額をいいます。 そして、最低賃金額は、「時間」によって定めるものとされています(最低賃金法3条)。
最低賃金には、職種別の最低賃金と、地域別(都道府県別)最低賃金とがあります。
職種別最低賃金は、小売業の場合は、衣食住にわたる各種商品を一括して一事業所で小売する事業所(現在710円)及び新車自動車小売業(現在786円)だけが対象です。
地域別最低賃金は、福岡県の場合で、平成22年10月22日から692円(改定前680円)に引き上げられました。
最低賃金が複数適用される者については、いずれか高い額が適用されます。
産業別最低賃金の適用がある場合や、労働者の住所と勤務先の都道府県が異なる場合が該当します。
【月給制と最低賃金の関係】
既述の通り、最低賃金の額は、「時間」単位で決められています。
従いまして、月給制の場合の最低賃金は、1カ月の所定労働時間数と最低賃金額の掛け算となります。
1週間の所定労働時間40時間・1日所定労働時間8時間で、完全週休二日制の場合、年間休日数が105日以上となります。
所定労働日数が260日であれば、この場合の最低賃金は、次の算式@の通りです。
1カ月単位の変形労働時間制を導入している場合は、年間平均1カ月所定労働時間数の最大値は365日÷7日×40時間で2,085.714時間です。の場合の最低賃金は、次の算式Aの通りです。
※いずれも福岡県最低賃金の場合
@260日×8時間÷12カ月×最低賃金692円=119,947円
A2,085.714時間÷12カ月×最低賃金692円=120,277円
以上の通り、週40時間制の月給者の最低賃金は、福岡県最低賃金の場合で概ね12万円程度です。
【その他の注意点】
月給制の場合の最低賃金は以上の通りとなりますが、月給制の最低賃金の注意点は、何といっても時間外労働手当です。 最低賃金には、もちろん時間外労働は含まれていません。
法定時間外労働については、別途割増率(通常2割5分以上、法定休日3割5分以上)を乗じて支払う必要があります。
また、注意点として、最低賃金が保障されているかどうかを判断するに際し、精皆勤手当、通勤手当、家族手当、時間外労働賃金、賞与等は含まれません。
月給支給総額が15万円であっても、精皆勤手当1万円、通勤手当2万円、家族手当1万円が含まれている場合は、これらを控除した11万円をベースに計算されるため、最低賃金法違反となります。
月給制との関係に限られませんが、事業所の見やすい場所に最低賃金額を掲示する等の周知義務が課されていることにも注意しておきたいところです。
【法違反の罰則】
地域別最低賃金を下回る賃金しか支払わなかった場合は、50万円以下の罰金刑とされています(最低賃金法40条)。
また、最低賃金額を掲示する等周知義務に違反したときは、30万円以下の罰金刑です。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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