【労働基準法3条】
まず、労働基準法3条を紹介します。
労働基準法3条
使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱いをしてはならない。
差別的取扱いを禁止する条項です。
「信条」とは、宗教上の信仰と政治的な信条を意味します。
そして、「その他の労働条件」には、解雇が含まれます。
即ち、宗教上の信仰を理由として、解雇することは認められません。
「信仰を理由として解雇するのではなく、他の従業員を宗教に勧誘したことを理由とする解雇だ」と主張したくなる気持ちでないかと推察します。
しかし、信仰の自由は憲法で認められており、行き過ぎた勧誘行為によって刑事上の問題になるような場
合を除き、解雇理由としては認められないと考えておいてください。
【解雇が認められるケース】
既述の通り、宗教を信仰することを理由とする解雇はできませんが、労働者としての服務規律違反が理由であれば、その具体的な違反の程度によって解雇が認められる可能性は考えられます。
事業所には、施設管理権がありますので、事業所内における布教活動を禁止しているにもかかわらず違反すれば、服務規律違反です。
また、労働者は就業時間において誠実に労働に服する義務を負いますが、この義務を果たさずに、
就業時間中に業務と無関係の行為である宗教活動をすれば、これも服務規律違反です。
以上のような事実が発覚したときでも、いきなり解雇しても裁判になれば認められない可能性が高いので、まずは注意指導を徹底し、それでも改善されないときは解雇を検討することになります。
【採用の自由】
ところで、変な宗教を信仰する人については、最初から雇用しなければそのような問題に巻き込まれる必要もありません。
ご質問にて、採用に際して新興宗教等を信仰している人を採用しないよう考えられておりますが、このことは全く問題ありません。
最高裁の判例も、「企業者が特定の思想・信条を有する者をそのゆえをもって雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできない」としています(三菱樹脂事件、最高裁昭和48.12.12)。
しかし、問題となるのは、どうやって宗教等の信仰を確認するかという点です。
現に労働局は、信仰に関する質問は、憲法で信仰の自由が認められていることを理由に、信条等の確認をしないように求めています。
個別事業所の業種等によっては、確認することが認められる場合があると思われますが、一般事業所はおおっぴらにはできないと考えておかざるを得ません…
少なくとも、間違って雇用したときに適用される就業規則の整備が大切だといえるでしょう。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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