【派遣労働契約】
派遣労働契約は、@派遣元会社、A派遣先会社、B派遣労働者、の三者間の契約です。
このいずれが欠けても成立しません。
派遣労働者は、派遣元会社との労働契約に基づいて、派遣元会社から賃金を受けます。
しかし、実際に就労するのは、派遣先会社です。
派遣先会社が、派遣労働者の労務提供を受けるという関係になります。
【期間の定めのある労働契約】
ご質問は、残期間の賃金保障をしなければならないかという点ですが、その前に、今回何が問題であるかについて確認したいと思います。
まず、契約期間の定めのある労働契約は、原則としてその期間の途中で解約できません。
仮に解約するのであれば、「やむを得ない理由」がなければ認められません。
やむを得ない理由が認められたとしても、それが過失によるものであれば原則として残期間の賃金保障をしなければなりません。
これは、派遣労働契約に限られない、一般原則です。
今回のケースで問題となるのは、契約期間の途中で派遣先会社が倒産したことにより、残期間をどう考えるとよいかという点です。
少なくとも、貴社は次の仕事を紹介していますが、本人が拒否しています。
この状況において、責任の所在がどこにあるのかという問題があります。
【本来の有責者】
既述の通り、派遣労働契約は、三者間の契約であり、三者のいずれが欠けても成立しません。
今回問題が発生した原因は、三者のうち「派遣先会社」が欠けた事によるものです。
従って、派遣先会社が欠けることになった原因が、客観的に合理性を欠くものであれば、派遣先会社の責任といえます。
倒産した場合、派遣契約が継続できないことは仕方ありませんが、その責任は派遣先会社にあります。
即ち、今回のケースでは、派遣先会社が、派遣労働者の残期間の賃金保障をしなければならないことになります。
即ち、仮に貴社が派遣労働者に法律上何らかの保障をしなければならないのであれば、その保障額を限度に派遣先会社に求償できることになります(倒産のため実効性に問題はありますが)。
【ご質問への回答】
以上の流れから、派遣元会社である貴社には派遣先会社の倒産に関する責任はないと考えられますが、派遣労働者の直接雇用主として、使用者の責任を負います。
具体的には、派遣労働者に対し、就業先を紹介することです。
貴社は、この紹介を行っていますが、派遣労働者がこれを拒否しています。
拒否している理由にもよりますが、拒否することに正当な理由がなければ、派遣元会社である貴社には責任はないと考えられます。
即ち、残期間の賃金保障をする義務はないということです。
以上から、貴社の就業先紹介に不当な目的等がある場合や、就業先の選択肢について十分な情報提供をしなかった場合等を除き、賃金保障をする義務はないと考えます。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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