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福岡!企業!元気!のためのワンポイントQ&A 《平成23年9月号》
雇用促進税制
  質 問

【質問者】
 IT関連企業(労働者数20名)

【質問内容
 当社は、IT関連企業で、従業員数は20名です。本年3月決算では大きな利益を出し、相当の法人税を納めることとなりました。納税は喜んで致しますが、その後の使途には大きな疑問を抱いているところです。
 さて、今期も業績は好調で、1名だけ能力不足を理由に解雇しましたが、10名程度の従業員の増員を検討しております。
 最近、「雇用促進税制」という制度を耳にし、従業員を雇用すると法人税が一部免除される制度ができたと聞きました。
 当社は人員も増加予定だし、納税額もそれなりにあるので、対象になるのではないかと考えております。
 具体的にどのような制度で、どのくらい減税となるのか教えて下さい。

  回 答

【雇用促進税制】
 雇用促進税制は、本年4月からスタートするはずだった税制優遇制度です。
 東日本大震災の発生により、多少スタートが遅れましたが、6月末に成立し、やっと運用が開始されたばかりの制度です。
 雇用促進税制とは、前年と比較して労働者数を一定以上増加させた事業主に対し、法人税(個人事業の場合は所得税)を一部税額控除する制度です。
 適用をうけるためには、事業年度の当初2カ月以内に、「雇用促進計画」の提出が必要となります。

【制度概要】
 平成23年4月1日〜平成26年3月31日までの期間内にいずれかの始まる事業年度(適用年度)において、対象要件を満たす事業所について、労働者数増加数1人あたり20万円の税額控除が受けられる制度です。
 一瞬大きな税額控除に感じられますが、当期の法人税額(個人事業の場合は所得税額、以下同じ。)の20%が控除額の限度です。
 従って、1人あたり20万円控除というよりも、税額控除の最高額が20万円というような意味となります。

【対象となる事業主】
 雇用促進税制の対象となり得る事業主は、次のすべてに該当する事業主です。
 @青色申告事業主
 A適用年度とその前事業年度に事業主都合による離職者がいないこと
 B事業年度開始後2カ月以内(※)に雇用促進計画を提出していること
  ※平成23年4月1日〜8月31日までに事業年度開始の場合、特例で平成23年10月31日まで
 C適用年度に労働者数を2人以上、かつ10%以上増加させていること
 D適用年度における賃金総額が、「比較給与等支給額以上(※)」であること
  ※前事業年度の賃金総額<前事業年度の賃金総額+前事業年度の賃金総額×雇用増加割合×30%
 E風俗営業等を営む事業主でないこと
 F事業年度終了後2カ月以内に雇用促進計画達成状況の確認を受けること

【特例期間】
 既述の通り、原則は事業年度開始から2カ月以内に雇用促進計画を提出する必要がありますが、東日本大震災の影響で成立が遅れたことから、特例期間として平成23年4月1日〜8月31日に事業年度を開始した場合は、10月31日までの提出で受理されることとなっています。
 言い替えると、3月決算以降の事業所であれば、10月までは手続が可能であるということです。
 貴社の場合、まだ間に合うということです。

【ご質問への回答】
 労働者の増加数、法人税の納税等問題なさそうですが、ただ1点、解雇の存在がひっかかります(要件A)。
 結論として、減税対象となりません。
 来期も「前期」に解雇があるため対象になりませんが、更にその次の期(平成25年4月〜)には、狙える可能性が残されます。
 雇用関係の助成金や優遇制度は、解雇があるとこのように不利益となるのが通常なので、注意したいところです。

回答者  特定社会保険労務士 安藤 政明

人事労務全般、就業規則・諸規程、監督署調査、労働紛争、社会保険、労災、給与計算、契約書
安藤社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士・行政書士・一級FP技能士/CFP 安藤 政明
特定社会保険労務士・第二種衛生管理者 箭川 亜紀子
810-0041福岡市中央区大名2-10-3-シャンボール大名C1001
TEL 092-738-0808/FAX 092-738-0888/
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