【休職とは】
「休職」とは、よく聞く言葉ですが、法律上義務づけられた制度ではなく、事業所が就業規則等で定めて実施する制度をいいます。
貴社の場合、おそらく私傷病に基づく休職制度として、最長1年間の休職を認めているものと思われます。
もともと労働契約は、労働者が事業所に使用されて労務を提供し、事業所はその労働の対償として賃金を支払うという契約です。
即ち、傷病で労務提供が不能となれば、契約上の債務の履行ができないわけですから、原則として解雇事由となり得ます。
しかし、いきなり解雇するのではなく、一定期間を「解雇猶予期間」とするのが、休職制度だといえます。
【休職期間満了が意味するもの】
休職制度は、既述の通り解雇猶予制度ともいえる制度です。
その猶予期間が満了しても復職できない場合は、原則として労働者としての地位を失うこととなります。
従って、退職を望まない労働者は、休職期間満了までに復職したいと考えることとなります。
今回ご相談の件は、おそらく労働者が退職を望まず、少しでも何らかの仕事ができる状況である旨医師に診断書の作成を依頼し、貴社に提出したものと思われます。
【復職の判断に関する裁判例】
完全に原職務の遂行が可能であれば、復職の申し出に対して悩むことはありません。
しかし、今回のケースは違います。
原職務の遂行ができない状況なので、貴社として困った問題となっています。
裁判例は、職種や業務内容を特定せず労働契約を締結した場合は、その能力、経験、地位、当該企業の規模、業種、当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った労務の提供があると解するのが相当であると判示してます(片山組事件,最高裁平成10年4月9日判決)。
【ご質問への回答】
ご質問いただいた情報だけで判断するのは困難ですが、正社員で、将来は異動の可能性があることから、復職を認めざるを得ない可能性もあると考えられます。
貴社の異動の実情や、事務職として配置する現実的可能性等の状況によっては、復職を拒否することが認められる可能性も考えられます。
中小企業の製造業の場合、事務職は採用から退職までずっと事務職のままであることが多いと思われます。
今後のため、事務職、製造職、営業職等を区分して職種限定で採用することもご検討いただくとよいかもしれません。
労働紛争は、事前準備によって予防可能な事項も多く存在します。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
|