【残業代単価の基本】
まず、月給制の労働者の場合の残業代計算の基本を確認します。
基本は、「月額賃金÷年間平均の1カ月あたりの所定労働時間数」が残業1時間あたりの単価となります。
例えば、月給が17万円で、年間平均1カ月所定労働時間数が170時間の場合は、時間単価は1,000円です。
この「月額賃金」は、まずは、原則として基本給に加えて月単位で支給するすべての賃金を合計した額だと考えて下さい。
月給制の労働者であっても、労働法上は時間給のようなものだと考えていただくとよろしいかと思います。
【残業代計算から除外する賃金】
例えば、通勤に要する実費を通勤手当として支給する場合、通勤手当が高い労働者の残業代単価が高額となるのは不合理です。
そこで、残業代計算において、その計算基礎に含まれない賃金が法律で定められています。
賃金は原則自由ですが、残業代計算の基礎に含まれない賃金は、法律上の根拠が必要です。
具体的に、残業代計算の基礎に含まれない賃金は、次の通りです。
@家族手当 A通勤手当 B別居手当
C子女教育手当 D住宅手当
E臨時に支払われた賃金
F1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金
【各手当の要件】
例えば、「家族手当」という名称で支給すれば残業代単価にならないとすれば、基本給12万円、家族手当18万円で合計30万円の場合は12万円だけが残業代基礎となり、不合理です。
即ち、家族手当は、家族の数に応じて支給されるものでなければ認められません。
同様に、通勤手当も、通勤に要する実費に応じて支給されるものでなければなりませんし、住宅手当も家賃又は住宅ローン等の負担に応じて支給されるものでなければなりません。
もちろん、これらの名称で、支給は一律とすることが違法ではありませんし、完全に事業所の自由です。
残業代計算の基礎には含めなければならないということです。
貴社の手当にありませんが、別居手当とは単身赴任者への手当、子女教育手当とは労働者の子の学費等を補助する手当、臨時に支払われた賃金とは慶弔給付等、1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金とは賞与等とお考え下さい。
【ご質問への回答】
貴社の住宅手当、通勤手当は、以上の通り残業代計算の基礎に含めなければなりません。
一律支給のため、住宅費用負担や通勤実費負担と無関係の手当であることが理由です。
家族手当は、一見良さそうに見えますが、独身者に支給されることが問題となります。
全員に5,000円、配偶者がある者にはプラス5,000円ということなので、この差額の5,000円だけが残業代計算の基礎に含まれない部分ということになります。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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