【背景】
労働紛争件数は、飛躍的に増大しています。
権利意識の高揚、インターネット普及等による情報収集の容易化等に加え、リーマンショック、東日本大震災による雇用不安定等の要因もあり、今後もこの傾向が続くと思われます。
5年前、10年前の労務管理の常識が通用しなくなっています。
このような背景から、特に個別労働紛争に関する相談機関、申告機関等も拡充され、多種多様のものが存在します。
以下、制度等を紹介します。
【直接交渉】
最初に、直接交渉による解決を目指して要求するケースをを挙げたいと思います。
基本的に本人が貴社に直接交渉してくる場合と、代理人又は第三者と協同で交渉してくる場合とがあります。
前者は、相談で専門的見解を確認するだけであり(相談窓口)、後者は専門家も原則として業務として関与します(委任)。
[相談窓口]
社会保険労務士、弁護士などの労働法専門家
社会保険労務士会、弁護士会などが行う相談会、法テラス等
労働基準監督署などの行政窓口
[委任]
弁護士(代理人) → 代理人による交渉
連合労働組合への加入 → 労働組合による団体交渉
【行政機関への申告、あっせん】
次に、行政への申告及び紛争解決機関へのあっせん申立を紹介します。
行政申告は、労働基準監督署への申告が中心になりますが、派遣法、セクハラ等一部は労働局が申告窓口となります。
法違反があれば是正指導を受けることになります。
是正勧告に従わないと、書類送検される可能性があります。
一般に、サービス残業の支払いを求めて労働基準監督署に申告するケースが多いと思われます。
あっせん申立は、あっせん委員を間に交渉するもので、成立して和解する場合と、解決しない場合とがあります。
労働基準監督署が扱えない解雇問題、パワハラ問題等は、短期解決、費用がほとんどかからない等のメリットが大きいといえます。
デメリットは、必ず解決するとは限らないことです。
【裁判手続】
最後に、裁判手続です。
労働審判は、3回以内の審理で行われ、原則3カ月以内に審判が下されます。
通常訴訟と比較すると、早期解決を目指せる制度です。
しかし、労働審判の結果にいずれか一方が不服申し立てすると、通常訴訟に移行されます。
通常訴訟は、事案の内容次第で、相当期間を要しますし、弁護士費用もそれなりに要します。
判決に不服がある場合、三審制で紛争が長期間に及ぶことがあります。
労働審判、通常訴訟のいずれでも、審判、判決前に和解案が示されることが一般的です。
当事者双方が和解案を受け入れれば、そこで和解が成立します。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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