【法律上の定義】
パワハラとは、「パワーハラスメント」の略語です。 実は、法律上の定義はありません。
従って、法律上の明確な基準もないということです。
それでは、何故パワハラが違法だといわれるのかというと、憲法上の人権問題、民法上の不法行為等がその根底にあるということになります。
従来、一般にパワハラとは、「職務上の権限を背景に、本人の人格を傷つける言動をするなど、本人の意に反する行為をすること」のような感覚でとらえられてきました。
簡単に言い替えると、「職場のイジメ」のような感じです。
この「イジメ」が、民法上の不法行為となり、使用者責任を問われて賠償責任を負うという構図です。
【厚労省ワーキンググループによる類型化】
パワハラは、具体的な定義がないまま、大きな社会問題となっています。
このような実態を背景に、厚労省は、パワハラの定義を検討しています。
平成24年1月末、厚労省のワーキンググループが、パワハラの定義に関する報告書をまとめました。
これによると、パワハラは6つの類型にまとめられました。
今後は、この報告書の基準が大きく影響するものと思われます。
@身体的な攻撃
身体への直接的な暴行、傷害など
A精神的な攻撃
脅迫、侮辱、暴言など
B人間関係からの切り離し
無視、隔離など
C過大な要求
遂行不可能な業務の強制、仕事の妨害など
D過小な要求
能力や経験と比較して極めて程度が低い仕事の強制、仕事を与えないなど
E個の侵害
私的なことに過度に立ち入ることなど
※報告書では、「上司→部下」だけでなく、「同僚→同僚」や「部下→上司」の行為もパワハラとなりうることが示されています。
【事業所の対応】
以上の通り、報告書で定義らしきものが示されましたが、明確な基準とはいえない内容です。
ただ、なんとなくかもしれませんが、概要はわかると思います。事業所としては、日ごろからパワハラ教育をすることが重要です。
6つの類型について、周知徹底しておくことで、従業員(特に加害者側)に認識させたいところです。
また、パワハラとなることを恐れて部下の指導等をしないケースが増えているといわれますが、これは本末転倒です。
相手の人格を尊重しつつ、業務上必要な指導や叱責は堂々と行わなければなりません。
パワハラ教育と同様、業務上の教育は必要不可欠なのです。
パワハラが厄介なのは、このあたりかもしれません。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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