【試用期間とは】
多くの事業所が、採用後一定期間について、試用期間又は見習い期間と位置づけて、本人の適性や能力を評価して本採用するかどうか検討することとしています。試用期間を設けることで、試用期間満了後に継続して雇用することに問題があると判断したときは、比較的簡単に本採用を拒否できるというイメージが持たれやすいといえます。
しかし、試用期間は、その言葉のイメージ(「お試し」の使用期間)と、法律の考え方には大きな乖離があると思われます。労働基準法の規定、解雇の有効性について、確認したいと思います。
【労働基準法における試用期間中の解】
解雇は、30 日以上前に予告又は平均賃金30 日分以上の解雇予告手当を支払わなければなりません(労働基準法20 条)。この規定の適用除外例として、「試の使用期間中の者」と定めています。しかし、「14 日を超えて引き続き使用されるに至った場合は、この限りでない。」とされています(労働基準法21 条)。
即ち、試用期間中であっても、14 日を超えてから即時解雇するときは、平均賃金30日分以上の解雇予告手当を支払わなければならないということです。
予告手当支払に抵抗がある場合は、30 日以上先の日を指定して解雇予告する選択もできます。しかし、入社1 カ月経過時点で「30 日後に解雇」と言われた者の気持ちになって考えると、士気は低くなると言わざるを得ません。解雇予告後、本人の都合で出勤しなければ、賃金は発生しません。しかし、事業所が解雇日までの期間について
出勤しなくて良いとしたときは、少なくとも約6 割の休業手当を支払わなければなりません。
試用期間満了時に本採用拒否する場合も、試用期間満了の30 日前までに本採用しないことを通知する必要があります。
【解雇は有効か】
そもそも、試用期間中や試用期間満了時であれば、解雇は認められるのでしょうか。一般の労働者を解雇するときは、いわゆる解雇権濫用法理に照らし、極めて厳しく制限されています。試用期間は、解雇権留保特約付労働契約とも言われますが、解雇権の行使には、やはり解雇権濫用法理が適用されてしまいます。通常の労働者と比較すると、やや広範に認められるとされていますが、少なくとも恣意的な判断による解雇が認められることはありません。
【事業所の対応】
以上の通り、解雇が認められるかどうかという壁があります。お聞きしたところ、極めて問題がある新入社員のようですが、特に新卒の場合は、長期雇用を前提とした採用とされるため、事業所がどれだけ指導、教育等を行ったか等について厳しく判定される傾向にあります。
まだ1 カ月なので、社会人としてのルール、貴社の方針、具体的な業務等について指導するとともに、挨拶や出退勤不良は本採用拒否理由になることを明確に示し、もう1カ月猶予を与えた方が良いかもしれません。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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