【労働時間とは】
ご質問は、直行や直帰のとき、どこまでが労働時間となるか、という内容です。まずは、「労働時間」とは何なのか、考えてみたいと思います。
いきなり結論ですが、労働時間とは、使用者(事業所)の支配下にある時間かどうかで判断します。使用者の支配下にある時間であれば、現実に働いていない時間であっても、労働時間となります。
逆に、支配下になければ、本人の意思で労働したとしても、原則として労働時間にはなりません。「原則として」としたのは、支配下にない場合でも、本人が労働していることを使用者が認識し、黙認しているとき等は、労働時間となるからです。
直行や直帰の際も、支配下にある時間かどうかで判断することになります。
【通勤時間】
話が変わりますが、通勤時間はもちろん労働時間ではありません。通勤途中でどこかに立ち寄る等すべて本人の自由であり、事業所は正当な理由なく通勤途中の本人の行為に対して干渉することはできません。従って、事業所の支配下にないので、労働時間にならないわけです。
ところで、通勤とは、本人の住居と勤務場所の往復をいいます。直行や直帰の場合の勤務場所とは、貴社の場合は顧客訪問のため出向いた場所ということになります。
【直行直帰と労働時間】
直行及び直帰は、言い替えると「通常と異なる勤務場所と住居の往復」ということになります。直行や直帰に際し、住居を出発して寄り道しながら直行しても、顧客との約束時間に到着すれば良いし、顧客との面談終了後の直帰もそのまま帰らずに遊びに行っても良いわけです。即ち、直行のときは訪問先に到着する前の時間、直帰のときは訪問先で業務が終了した時間の後の時間は、通勤時間であり、労働時間に該当しないことになります。
【質問への回答】
以上から、20時に訪問先で業務終了して直帰すれば、終業時刻は20時です。いったん会社に戻って日報を作成してから21時に帰宅する場合は、21時となります。残業代負担の観点では、日報作成は翌日にさせ、直帰させた方が良さそうですね。
直行の場合は、原則として訪問先に到着した時刻が始業時刻となります。但し、その時間が9時(所定始業時刻)より後の時間である場合は、原則として9時が始業時刻となります。直行が認められている以上、本来の始業時刻に対して遅刻した取扱とするのは不合理だからです。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
|