【不利益変更】
賃金は、労働条件の中でも最も重要な事項です。労働契約は、労働者が事業所の指揮命令に従って労務に服し、これに対して事業所が賃金を支払う契約です。従って、決められた賃金を支払う義務を負います。
賃金を変更することは、労働契約の変更にあたります。そして、賃金の変更には、増額と減額とがあります。増額する場合は、その従業員にとってはプラスなので労働紛争になることはあり得ませんが、減額する場合は全く逆で、従業員にとって不利益であることから「不利益変更」といいます。
【合意原則】
具体的な賃金減額の方法が不明ですが、例えば既存の賃金の一部を業績給に変更し
て、業績に応じて増減するような制度とするものと思われます。貴社にとっては、全
体の総額賃金は変わらないのでしょうが、C店の従業員は確実に減額となることが見
込まれるものと思われます。実績に応じる賃金であって、一定の合理性は認められま
すが、C店の従業員にとっては従来の固定的賃金が引き下げられる点において、不利
益変更に該当すると考えられます。
不利益変更であっても、労働契約は合意が原則であることから、C店の従業員に対
して誠実に説明して合意が得られるのであれば、賃金制度の変更は可能です。まずは、
合意が得られるよう、協議して下さい。
【就業規則の不利益変更】
合意が得られない場合で、それでも賃金制度を変更する場合は、万一紛争になっても認められる内容でなければなりません。当・不当は、次の事項で判断されます(労働契約法10 条)。
@ 労働者の受ける不利益の程度
A 労働条件の変更の必要性
B 変更後の就業規則の相当性
C 労働組合等との交渉の状況
D その他の就業規則変更にかかる事情
【貴社の対応】
変更の必要性はある程度認められると思いますが、簡単に賃金減額が認められるわ
けではありません。とにかく従業員との協議を重ね、少し妥協してでも合意を目指し
たいところです。どうしても合意が得られなければ、不利益の程度を小さくするため、
賃金の減額幅は最大限1 割以下、できれば5 〜 8%程度にすべきでしょう。また、制
度移行まで一定の猶予期間を設けることも検討すると良いでしょう。
ちなみに、賃金制度変更の他に、人事異動その他可能な対応についてもご検討いた
だきたいと思います。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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