【よくある質問】
いただいたご質問、実は本当によくある質問です。
先に結論を申し上げておきますが、本当は自己都合退職なのに会社都合と偽った手続は、絶対にしてはいけません。
【失業等給付の離職理由】
事業所は、従業員の雇用保険関係の手続をする義務を負います。そして、その手続は、当然に真実に基づいた届出でなければなりません。
特に退職時に行う手続については、その離職理由によって失業等給付の最大受給期間や受給開始時期が決まるものなので、正確に真実の届出をする必要があります。
自己都合退職であることが真実であるにもかかわらず、会社都合として処理することにより、退職した従業員は不正受給をすることとなります。軽く考えてこのようなことを行う者がいるようですが、これは刑法の詐欺罪を構成する悪質な犯罪行為といえます。今回退職する社員は、仕事はよく頑張ったかもしれませんが、コンプライア
ンス(遵法精神)の観点からは問題社員といえます。
【不正受給と3倍返し】
失業等給付の不正受給には、いろいろなパターンがあります。最も多いパターンは、アルバイト等の収入を秘匿して失業認定を受けて受給する方法です。また、就職する意思がないのに、偽装求職により失業等給付を受給する方法もよくあります。
どのような方法であっても、偽りその他不正行為によって失業等給付を受給した者は、不正に得た給付を全額返還させられることはもちろん、悪質であれば受給した額の最大2 倍相当額の納付を命ぜられます。合わせて受給額の3 倍返しと呼ばれるところです。
この3 倍返しは、本人だけの問題でなく、事業所が連帯して責任を負わされる場合があります。それは、事業所が「不正受給を幇助又は教唆し、その手段として虚偽の届出、報告又は証明を行ったこと」に該当する場合です。
【貴社の対応】
以上の通り、犯罪行為に荷担してよいわけがないことから、今回の離職票の退職理由の届出は、必ず自己都合退職としなければなりません。
仮に、会社都合退職として届出した場合で、特に調査等がなく何事もなく過ぎてしまったらどうなるかについて述べておきます。まず、犯罪行為でありながら発覚しなかっただけであり、到底認められる行為ではないことが前提です。直接的な影響として、厚生労働省の助成金等の受給が一定期間できなくなります。
例えば、公共職業安定所の紹介で母子家庭の母や高齢者等を雇用すると、原則として特定求職者雇用開発助成金という助成金が受給できるのですが、会社都合退職者があったら一定期間は支給対象外となります。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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