【合同労組】
労働組合には大きく分けると、事業所の従業員だけで組織する労働組合の他、一人でも加入できる労働組合とがあります。後者が、合同労組と呼ばれる労働組合です。
今回は在職者が加入したようですが、退職後も加入できます。そのため、特に中小企業等の場合、退職した従業員が合同労組に「解雇」、「不払残業」等の相談をして組合員になり、そのまま団体交渉となるケースが多いようです。
【団交応諾義務】
合同労組の場合、事業所の従業員でない委員長や書記長等を名乗る者が、団体交渉を求めてきます。もちろん、知らない人であることが普通です。しかし、残念ながら労働組合法によって事業所は団体交渉申入れに応諾する義務があります。従って、無視することはできません。
団体交渉では、通常は合同労組の書記長等を名乗る者と本人(A)が出席しますが、中には、一見関係ない人が数人押し寄せてくることもあります。まずは、団交申入れに対し、事前に団交の日時や出席人数等について文書のやりとりをしておく必要があります。合同労組が指定した日時等に従う義務はありません。
【不当労働行為】
Aを解雇したい気持ちはよくわかりますし、道徳的には解雇すべきだと思います。しかし、労働組合に加入したことや、団体交渉を申入れたことを理由として解雇することは不当労働行為として認められていません。Aの日頃の能力不足等を理由とする解雇を主張されると思いますが、このタイミングでの解雇は避けるべきです。
【誠実協議】
労働組合法は、団体交渉を拒否することは認めていませんが、要求事項を実現させなければならないとする義務は当然課しておりません。従って、最終的に要求事項に従う義務はありません。
要求事項の@は、あらかじめ2 カ月分の賞与を支払う労働条件となっていたのであれば、支給せざるを得ない可能性も考えられますが、通常賞与は事業所の裁量で支給するものであり、また事業所の経営状況から勘案しても要求に応じる必要はないと思われます。Aは、未払いの残業代があるのであれば法律上支払わざるを得ません。高めに要求している可能性もあるので、内容をよく吟味することが必要です。すぐに支払えない場合は、分割払い等の協議をする必要があるかもしれません。Bは、@と類似しますが、毎年の昇給を約束する労働条件でない限り、昇給する義務はありません。Cについては、あらかじめ団交前に具体的な内容を確認しておくと良いでしょう。
回答者 特定社会保険労務士 安藤 政明
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