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福岡!企業!元気!のためのワンポイントQ&A 《平成24年11月号》
65歳までの高齢者雇用義務
  質 問

【質問者】
 内科医院(看護師4 名、助手2 名、事務1 名)

【質問内容】
 当院は、個人の内科診療所です。この度、先代の父親から正式に経営を譲渡されました。看護師4 名のうち2 名が59 歳ですが、この2 名が出勤率が極めて悪く、また、他の職員に嫌がらせをして辞めさせるなどの行為があるため、経営譲渡の機会に辞めてもらおうと思ったのですが、父から「もうすぐ60 歳定年だから、それまで雇ってやってくれ」と言われ、これに従いました。
 当院は、労使協定で、60 歳定年に達した時点で、@協調性がない者、A出勤率が9割未満の者等については、再雇用しないとしております。だから、あと1 年くらいの辛抱だと思っておりました。2 人は、平成25 年4 月と6 月で満60 歳を迎えます。既に、私の関係者で、その時期から働いてもらえる看護師も確保しています。
 しかし、この度法改正があって、平成25 年4 月以降に60 歳になる人については、希望者全員を65 歳まで雇用しなければならなくなったと聞きました。これが本当なら、とんでもない話しです。実際のところ、どうなんでしょうか?

  回 答

 【現行法】
 現行法は、65 歳までの雇用義務を前提としながらも、労使協定で基準を定め、その基準に達しない者については、60 歳定年等の後の期間については雇用義務を免除されるしくみです。
 貴医院は、既にこの基準を定めていて、看護師2 人がこの基準のため60 歳定年で再雇用しないことを前提に、その後の計画等をされているところのようです。
 逆に、労使協定で基準を定めていない場合は、原則として希望者全員を65 歳まで雇用する義務があります。もし50 代の職員さんが在籍していて、65 歳まで雇用することに支障がある場合は、今からでも労使協定で基準を定めておくべきです。
 ちなみに、雇用義務といっても、60 歳前と同じ労働条件とする義務はありません。
 ほとんどの事業所が、60 歳を境に大幅に賃金を減額するしくみを作っています。

【改正法】
 改正法は、ご指摘の通り、原則として希望者全員について65 歳までの雇用を義務づけるものです。即ち、現行法の「基準」を廃止するものです。
 しかし、突然廃止してしまうのではなく、経過措置があります。平成25 年4 月から3年間は、希望者全員の雇用義務は61 歳までで、61 歳以後は従来の労使協定による基準に従って継続雇用するかしないかを決めることができます。さらに3 年後の平成28年4 月からは62 歳、さらに3 年後の平成31 年4 月からは63 歳というように、希望者全員雇用義務の年齢は3 年ごとに1 歳ずつ引き上げられ、完全に65 歳までとなるのは平成37 年4 月からの予定です。
 この引き上げ方は、老齢厚生年金の受給開始年齢と関係があります。65 歳までの厚生年金は、段階的に受給開始年齢が引き上げられ、最終的に65 歳になる予定です。この老齢厚生年金の段階的引き上げで無年金となる期間について、希望者全員雇用義務を課すことを目的とする法改正です。希望者全員といっても、65 歳前に解雇相当の事由がある場合等は、もちろん解雇は可能です。

【貴医院の場合】
 以上から、2 名の看護師は、61 歳までは雇用義務がありますが、その後は基準に達しないのであれば雇用継続する必要はないことになります。
 ただ、当初の予定が1 年延長されることは、何かと支障がありそうですね。既に平成25 年から雇用予定の看護師さんもいらっしゃるようですし。2 名の看護師が60 歳定年後の再雇用を希望しない場合は、予定通りとなります。もし再雇用を希望する場合も、すんなりと受け入れる前に、協議することも可能です。例えば、再雇用しない代わりに解決金として○○円支払う、等です。結果的に問題職員が得をするようで、イヤな世の中ですが・・・

回答者  特定社会保険労務士 安藤 政明

人事労務全般、就業規則・諸規程、監督署調査、労働紛争、社会保険、労災、給与計算、契約書
安藤社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士・行政書士・一級FP技能士/CFP 安藤 政明
特定社会保険労務士・第二種衛生管理者 箭川 亜紀子
810-0041福岡市中央区大名2-10-3-シャンボール大名C1001
TEL 092-738-0808/FAX 092-738-0888/
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