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福岡!企業!元気!のためのワンポイントQ&A 《平成24年12月号》
賞与の額
  質 問

【質問者】
 雑貨販売業(正社員1 名、パート6 名)

【質問内容】
 当社は、輸入雑貨等を販売する店舗を経営しています。店舗をオープンして既に15年になりますが、売上は良かったり悪かったりを繰り返しながら何とか今日までやってきました。
 賞与は、年に二回、夏と冬に正社員にだけ支給しています。正社員は1 名だけですが、創業時からずっと働いてくれている人で、この人がいなければ店舗運営できないほど重要な人です。そろそろ冬季賞与を決めなければならない時季です。今までの賞与の決め方は、その都度適当に決めてきましたが、だいたい前回と同額か、又は前回に1 万円〜 3 万円程度プラスした額としてきました。
 ところが、ここ3 年間の売上不振は深刻で、この3 年間は賞与額はずっと同額の45万円です。それも、かなり無理して支払ってきました。今回は、既に賞与を支給するための原資はなく、前回の賞与額を支払えないばかりか、数万円支払うことも困難な状況です。賞与不支給とするのもあんまりなので、5 万円程度は何とかしたいと考えていますが、問題ないでしょうか。

  回 答

 【賞与】
 賞与は、労働基準法上の「賃金」に該当します。毎月の賃金の額については、労働時間に応じて最低賃金以上の額を支払うことが義務づけられるなどの規制がありますが、賞与の額については特段の規制はありません。そもそも、賞与は支給しなくても法律上問題はありません。即ち、賞与を支払う根拠は、すべて事業所と労働者との労働契約の内容次第ということになります。個別の労働契約で「賞与なし」とされていれば、当然賞与なしが原則となります。逆に、「賞与あり」とされているのであれば、賞与が支払われるこことが原則となります。賞与ありとされているだけの場合、その支給額は、原則としてその都度定められることになります。
 少し厄介なのが、労働契約である程度賞与が決められているケースです。例えば、賞与は基本給の2 カ月分支給という労働契約であれば、必ず契約に従って賞与を支給する義務があることになります。また、労働組合と団体交渉によって賞与が決められることになっている場合は、団体交渉で妥結した額が賞与額となります。

【就業規則】
 就業規則は、労働契約の中身になります。従って、原則として賞与の支給根拠は就業規則の規定です。多くの場合、就業規則の中に賞与の額は明示せず、その都度定めることになっていると思います。また、正社員であることや、賞与支給日に在籍していることを支給要件とすることも一般的です。
 貴社の場合、常用労働者数が10 人未満なので、就業規則はないかもしれません。その場合は、個別の労働条件通知書の記載事項が重要となります。しかし、賞与額を明示することは稀なケースだと思います。

【注意事項】
 以上から、貴社の場合、賞与額を前回まで45 万円だったものの今回5 万円とすることは、原則として問題はないと思われます。しかし、問題となるケースが考えられます。それは、本人に対して賞与は前回の支給額よりも下げないと約束している場合や期待させている場合です。
 例えば、利益等と無関係に基本給の2 カ月分等わかりやすい金額をずっと支払続けてきた場合は、仮に何も約束をしていなくても、労働慣行として義務が生じる可能性も考えられます。貴社の場合、その都度適当に決めてこられたことは非常に良いのですが、利益等と無関係に前回支給額を最低保障してきたという事実が少しひっかかります。おそらく、1 名の正社員とは、高度な信頼関係があると思います。賞与支給前に、貴社の状況等をよく説明の上、賞与支給が困難な状況を理解してもらうことが現実的に最も良い対応方法だと思います。

回答者  特定社会保険労務士 安藤 政明

人事労務全般、就業規則・諸規程、監督署調査、労働紛争、社会保険、労災、給与計算、契約書
安藤社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士・行政書士・一級FP技能士/CFP 安藤 政明
特定社会保険労務士・第二種衛生管理者 箭川 亜紀子
810-0041福岡市中央区大名2-10-3-シャンボール大名C1001
TEL 092-738-0808/FAX 092-738-0888/
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